100号

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ヘーゲルの反射規定と『資本論』49れる社会的な産物にすぎない。貨幣商品金は,それのもつ自然的な属性によって一般的等価物になるのではなく,それ以外のすべての商品による価値表現によって,受動的に価値鏡という....

ヘーゲルの反射規定と『資本論』49れる社会的な産物にすぎない。貨幣商品金は,それのもつ自然的な属性によって一般的等価物になるのではなく,それ以外のすべての商品による価値表現によって,受動的に価値鏡という役割をうけとる。それとちょうどおなじように,労働力は,労働者からの生産条件の排除によって,その価値と使用価値の両面から剰余労働を支出する特有な属性を特殊歴史的に規定づけられる。そもそも,独立生産者のばあい,生産条件を所有するため,付加価値はすべてみずからの再生産にようする必要労働をなし,剰余労働をふくまない。だから,たんなる商品生産の前提上では,労働力は,それ自体としては,剰余価値をうみださない。ところが,資本主義の基礎上では,労働者と生産条件との分離に対応して,労働力の価値は,その再生産にようするだけの必要労働の分量に圧縮される一方,労働力の使用価値は,その1日の使用権の資本家への帰属によって,必要労働をこえて消費される特有な属性を付与される。労働力が剰余価値をうむのは,生産条件との分離が,労働力の価値と使用価値との両面に,正反対のベクトルをもつ作用をあたえるからである。その差額が剰余価値になる労働力の使用価値と価値とは,ともに資本によってもたらされる社会的な被制約性である。したがって,労働力のもつ価値増殖能力は,生産条件の排他的所有がもたらすその反射規定にほかならない。剰余価値をうむ属性を労働力に内在する固有の能力とみなす見方は,貨幣のもつ直接的交換可能性を金のすぐれた自然属性にもとめる立場とかわらない。けだし,前者にあって,剰余価値創造の根拠が労働力そのものの属性にもとめられる点で,後者の貨幣のもつ直接的交換可能性が金の自然属性にもとめられるのと同一性格をもつからである。剰余価値をうむ属性は,労働力それ自身に直接起因するのではなく,それを商品へ転化させる生産条件の排他的所有によってうまれる。等価物が価値表現に規定されるその反射であるならば,剰余労働を創出する労働力の特有な属性もまた,対極に賃労働をもたらす生産条件の排他的所有という一極の反射である。ヘーゲルの反射規定は,等価物だけでなく,剰余価値を創造する労働力の独特な属性にもひとしくあてはまる。 これと同様,富と貧困との関係にも反射規定があてはまる。資本主義最大の否定面である貧困は,能動的な契機としての富のもたらす反射にほかならない。