100号

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ヘーゲルの反射規定と『資本論』51産関係命題のみならず,マルクスのいう富と貧困を消化するさいにも有益な方法である。1) 「資本主義的生産様式が支配的に行なわれている社会の富は,一つの『巨大な商品の集まり....

ヘーゲルの反射規定と『資本論』51産関係命題のみならず,マルクスのいう富と貧困を消化するさいにも有益な方法である。1) 「資本主義的生産様式が支配的に行なわれている社会の富は,一つの『巨大な商品の集まり』として現われ,一つ一つの商品は,その富の基本形態として現われる。」(Kapital, Ⅰ , S. 49)2) ヘーゲルは,その著作のなかで「富の過剰」(『法の哲学』論創社,高峯一愚訳,198ページ,原著1821年刊)にたいする「貧困の過剰」(同ページ)をとなえ,「市民社会」(197ページ)の「弊害」(198ページ)を主張している。「貧困の過剰」のおもての面に「富の過剰」をみる見方に,マルクスにつうじる考え方の萌芽がある。4 資本蓄積と労働者人口の増大 前節では,富と貧困との関係にも,ヘーゲルの反射規定が該当する事実を指摘した。本節では,資本蓄積は,同時に労働者人口の増加をその前提としてふくむマルクスの立場をとき,そこにヘーゲルの反射規定がみられる事実を主張する。 マルクスは,『資本論』第Ⅰ巻第23章で相対的過剰人口をみちびくさい,その第1節で「通常の労働供給」(Kapital, Ⅰ , S. 641)として「労働力または労働者数の増大」(Ibid.)を想定した。それでは,どうして,マルクスは,相対的過剰人口をとくさい,労働者人口の自然的増加を前提したのであろうか。一見すれば,労働者人口の自然的増加の想定は,失業者の生成をとくさい,前提のなかにあらかじめ結果をセットしておく同義反復の要素だとみなされがちである。しかし,さきまわりすれば,むしろ労働者数一定の想定こそ,じつは資本蓄積という概念に背反する。 すなわち,既述のとおり,生産条件の排他的所有は,それから排除された賃労働をつくりだす。一方の極での資本の形成は,他方の極での賃労働の形成をいみする。資本と賃労働は,対立的な契機でありながら,おのおの相手をうみだしあう。「資本の条件は賃労働である。」(マルクス/エンゲルス『共産党宣言』国民文庫,43ページ)「賃労働としての労働と,資本としての労働条件とは,同じ関係の表現であって,ただそれをちがった極から見たものにすぎない。」(Mehrwert, MEGA, Ⅱ /3・4, S. 1491)したがって,資本がその反射として賃労