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56 高知論叢 第100号に制定された介護保険制度であるが,そのねらいは,「介護の社会化」を「介護の保険化」という方法で実現させ,介護にかかる費用を要介護者と要「介護予防」者(第1号被保険者),及び,家族介....

56 高知論叢 第100号に制定された介護保険制度であるが,そのねらいは,「介護の社会化」を「介護の保険化」という方法で実現させ,介護にかかる費用を要介護者と要「介護予防」者(第1号被保険者),及び,家族介護者とその予備軍(第2号被保険者)から重点的に徴収することにあるといえる。また,今後さらに高齢化が進展するなかで,確実に増大する介護費用を保険料と利用料(利用者負担)に連動させることにより,システム的に負担の増大と給付の抑制を行うことが可能となる。介護の私事性を払拭し,家族の負担を軽減するだけでなく,民間事業所がサービス提供者として参入することで,従来の介護サービスの量的・質的な不十分さを大幅に改善できるとされた介護保険であったが,当初からむしろ社会保険「神話」に対する大いなる危惧があった。以下では,介護保険制度の創設に際して活発に行われた議論を簡単に振り返り,政策的な論点を見ていく。新たな介護保障制度に関する議論は,1994年3月,厚生大臣の私的諮問機関である「高齢社会福祉ビジョン懇談会」が発表した報告書「21世紀福祉ビジョン 少子・高齢社会に向けて 」から始まった。ここでは,「寝たきりや痴呆といった状況は,(中略)誰にでも起こりうるものであり,(中略)社会の必然としてとらえる」という考えが示され,「国民誰もが,身近に,必要な介護サービスがスムーズに手に入れられるシステム」として新たな制度を構築することが提案された。その後,政府関係機関が初めて新たな介護保障制度を社会保険方式で実施することを提起したのは,社会保障制度審議会の報告「社会保障将来像委員会 第二次報告」(1994年9月8日)においてである。この報告は,「はじめに(21世紀へのグランドデザイン)」,「1.社会保障の展開」,「2.21世紀に向けての社会保障の基本的な考え方」,「3.21世紀に向けての社会保障各制度等の見直し」,「おわりに(社会保障の国民理解)」から構成され,公的介護保険制度の創設については,「3.21世紀に向けての社会保障各制度等の見直し」の「(3)介護保障の確立」のなかで提起された。ここではまず,介護保障のあり方として,「介護保障とは,寝たきりなど生活上手助けを必要とする人とその手助けを行う家族の生活を守るために,その者が必要とする介護サービスを負担能力に妨げられずに受けられることを保障し,加えて,供給量と質的水準の確保を行う公的