100号

100号 page 6/242

電子ブックを開く

このページは 100号 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
4 高知論叢 第100号『古事記伝』における本居宣長の注では治はシロシメと訓じ,シラスとは訓じていない。治ではなく斯羅須をシラスと訓じている。『古事記』では各天皇が朝廷をおいた場所の後にのみ治の字を使用し....

4 高知論叢 第100号『古事記伝』における本居宣長の注では治はシロシメと訓じ,シラスとは訓じていない。治ではなく斯羅須をシラスと訓じている。『古事記』では各天皇が朝廷をおいた場所の後にのみ治の字を使用している。即位の場所と治の字へと続く文章は,各天皇巻頭の慣用句であるが,斯羅須について本居宣長が注釈を加えた箇所は,崇神天皇の巻においてのみである。崇神天皇は一説では最初の統一王朝,三輪系の皇祖神と伝えられる天皇である。本居宣長は中国地方の一族の祖と思われる大国主神一族から,中国地方の支配権委譲を受け,国家統一を図ったとされる崇神天皇にのみ斯羅須,故所知を使い,大国主神の支配権を意味するウシハクとは区別した,と井上毅は主張した。シラスという漢字は『古事記』では治,所知だけもシラスと読ませたが,『万葉集』,文武天皇以降の「詔」,『続日本紀』などでは領,御宇,知食の文字もある。『古事記』では,ウシハクは宇ウ斯シ,領ウ居シ,主ウシ,奴ヌ之シ,奴ヌ斯シとも同義である。『日本書紀』では御だけでシラスと読ませている注釈がある。本居宣長の注釈ではシラスは斯羅須,シロシメスは宇,所しろ知しめす食である。本居宣長によると所知食はシラスの尊敬語であり,シラシシは過去形である。『古事記伝』本居宣長の序では,本居宣長自身が「御宇」の文字をアメノシタシロシメシシと訓じている。「宇」の文字は,天子が統治する世界を意味する。本居宣長が生きた時代においては宇の文字はシラスと同義であった。『古事記』神代で最もシラスに言及があるのは大国主神の項である。大国主神は出雲の御大御前に座す時に様々な神々が来た。山田のそほど4という神は,悉く天下のことを知れる神なり0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ,と述べている。しかし,天照大神の御子である天忍穂耳神は天下り,天の浮き橋に立ち詔を述べた。瑞穂の国はたいへん戦でさわいでいると天照大神に昇って申した。再び天照大神の命を受けて,八百万の神々を河原に集めて,高たか御み産む巣す日びのかみ神,天照大神の命によって「葦原中0 0 0国は我が御子の知らす国0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 と言依さしたまへりし国なり5 」しかし,大国主神に媚びへつらう神がいる。天の日子が8年間服さなかった。また,高御産巣日神,天照大神に問うと,鳴女を使わせよという詔が降った。天照大神は「汝を葦原4 かかしと言われる神5 倉野憲司校注『古事記』岩波書店1963年56頁