100号

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58 高知論叢 第100号る支え合い,⑥介護基盤の整備,⑦重層的で効率的なシステム,の7点をあげた。社会保険方式が明示されたのは上記の「社会連帯による支えあい」においてであり,「普遍的なリスクである介護問題....

58 高知論叢 第100号る支え合い,⑥介護基盤の整備,⑦重層的で効率的なシステム,の7点をあげた。社会保険方式が明示されたのは上記の「社会連帯による支えあい」においてであり,「普遍的なリスクである介護問題を社会的に解決していくためには,個人の自立と尊厳を基本にしながら,社会全体で介護リスクを支え合うという『リスクの共同化』の視点が必要である。その意味で,本格的な高齢社会における介護リスクは,社会連帯を基本とした相互扶助である『社会保険方式』に基礎を置いたシステムによってカバーされることが望ましい」と述べて,新たな介護保障システムを社会保険方式で構築することを提起した。(2)介護保険制度における政策的論点介護のニーズを普遍的にとらえ,誰でもいつでもどこででも公的な介護サービスが受けられるという政策理念をふまえ,その後,新たな制度を社会保険方式で運営すべきか,あるいは公費負担方式で運営すべきかをめぐり,活発な政策論争が行われた2。政府サイドから社会保険方式の採用が提起されるなか,具体的には,社会保険方式の論拠とされる優位性に対し,批判的な検討を加えるかたちで議論がなされた。以下では,これらの議論における重要な政策的論点に関して,簡単に紹介することとする3。まず第1に,介護サービスの普遍的保障についてである。民間における私保険と同様に,介護保険の給付は保険料拠出を条件とするものであり,社会保険方式においては保険料を負担できないものが制度から脱落し,保険給付から排除される。これは,現在の日本における無年金・無保険問題からも明らかな点であるが,公費負担方式の場合,原理的な排除の仕組みが存在しない点で明らかな優位性をもつ。第2に,給付における権利性についてである。社会保険方式においては,被保険者は保険料を拠出することの見返りとして,保険給付を「権利として」受2 これについては,里見賢治・二木立・伊東敬文〔1996〕『公的介護保険に異議あり もう一つの提案(増補版)』を参照。ここでは,社会保険方式の優位性に関し,審議会報告や勧告など政府関係の文書や研究者の議論をふまえ,7つの論点に対して検討が加えられている。3 里見賢治〔2010〕『改定新版 現代社会保障論  皆保障体制をめざして』,p. 200参照。