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介護労働の変容と財政課題59けることができる。しかし,このような権利性は保険料を拠出した場合にのみ得られる制限的なものであり,介護のニーズに基づくものとして得られる真の権利性ではない。第3に,サービスの....

介護労働の変容と財政課題59けることができる。しかし,このような権利性は保険料を拠出した場合にのみ得られる制限的なものであり,介護のニーズに基づくものとして得られる真の権利性ではない。第3に,サービスの選択性についてである。従来の介護サービスはその量的・質的な整備が不十分であり,利用者にとって十分な選択性が確保されているとはいえない状況であった。しかしここで重要なことは,サービスの拡充に必要な人材の確保や施設整備のための施策と財源措置をより積極的に行うことであり,社会保険方式か公費負担方式かという制度の運営方式の選択に左右される論点ではない。第4は,財源調達の容易さについてである。社会保険方式においては,負担と給付の対応関係が明確であり,保険料負担とその増大に対する合意が得やすいとされる。しかし現物給付型の介護保険などでは,個々の被保険者の保険料負担の程度が給付の程度に対応することはない。多額の保険料を負担した者が多額のサービスを受けられるわけではないことから,この点については社会保険方式に対する幻想といえる。また,マクロ的な財源確保という点では,社会保険料はその使途が特定されるのに対し,使途が特定されない租税の場合はその負担に対し抵抗感がもたれる。特に政治不信の強い日本においてこの傾向は根強いが,使途を特定した目的税として負担を求めることも可能である。したがってこの点からも,社会保険方式に優位性があるとはいえない。以上4つの論点の検討から,公的な介護保障制度を社会保険方式によって運営することに論理的・現実的な優位性は認められないにも関わらず,その後政府サイドも含め十分な政策論争がなされないままに,1997年12月に介護保険法が成立し,2000年4月から施行された。(3)介護報酬への移行と新体系介護保険制度の導入にともない,それまでの「事業費補助方式」に代わり介護の費用として新たに介護報酬が算定されることとなった。ここでは,介護保険制度におけるいわば介護の「公定価格」である介護報酬がどのように議論され決定されていったか,以下で検討していく。