100号

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介護労働の変容と財政課題65的手間のかからない体位変換,移動介助,移乗介助,起床介助(寝床から起こす介助),就寝介助(寝床に寝かす介助)等の『動作介護』,②ある程度手間のかかる排泄介助,部分清拭,部分浴....

介護労働の変容と財政課題65的手間のかからない体位変換,移動介助,移乗介助,起床介助(寝床から起こす介助),就寝介助(寝床に寝かす介助)等の『動作介護』,②ある程度手間のかかる排泄介助,部分清拭,部分浴介助,整容介助,更衣介助等の『身の回り介護』,③さらに長い時間で手間のかかる(傍線部は筆者)食事介助,全身清拭,全身浴介助等の『生活介護』」の3つに大きく分類した。そのうえで,この分類に即して,「主として『生活介護』や『身の回り介護』を行うとともに,これに関連して若干の家事援助を行う場合」は身体介護中心型が算定され,「家事援助に伴い若干の『動作介護』を行う場合」は家事援助中心型を算定し,両者の「中間的な場合」は複合型が算定されると定義した。このように,介護報酬の単価はどの程度手間がかかり,時間を要するかという基準にもとづき設定されることとなり,個々の行為とその手間でサービス内容を定型化したうえで,それぞれの行為を含む介護サービスを全体でどれだけ実施したかという所要時間で報酬を決定するものである。いうまでもなく,介護サービスの専門性や重要性(重大性)は手間や所要時間で決まるものではない。例えば,体位変換や就寝介助(寝床に寝かす介助)は「動作介護」に含まれ,身体介護の例のなかでも最も所要時間の短いものの1つとして挙げられているが,その専門性と重要性は顕著である。特に,ADL が低下している利用者の場合には褥瘡(床ずれ)ができやすい。褥瘡は腰や肩,かかと,膝など骨の出っ張った部分にできやすく,適切なケアをしなかった場合,創傷は皮下組織を超え,骨にまで達する。その痛みから起床や離床も難しくなり,大量の体液が染み出すことなどから重大な感染症を引き起こす可能性もある。したがって,ADL の低下を防ぎ,QOL を保つためには,頻繁に体位変換し,かつ,その都度寝具やクッションなどを用いて体圧を管理し,分散させるなどの専門的な知識や経験,及び手間が欠かせない。「動作介護」などは手間のかからない介護(行為)として報酬が算定され,一定の時間内で,他の介護(行為)も含め実施することが求められることになり,現実の介護の現場で質の高い適切な介護を行うことが困難になる可能性があるといえる。