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74 高知論叢 第100号(3)2009年改定:「先祖返り」的改定高齢化の進展にともない確実に介護給付費が増大するなかで,それまでの2回の報酬改定はマイナス改定が行われたが,特に不況が深刻化した2008年以降,介護....

74 高知論叢 第100号(3)2009年改定:「先祖返り」的改定高齢化の進展にともない確実に介護給付費が増大するなかで,それまでの2回の報酬改定はマイナス改定が行われたが,特に不況が深刻化した2008年以降,介護従事者の離職率が高まった。こうした状況の背景には,介護従事者の賃金水準は全産業平均と比べても低く,業務に対する社会的評価も低いことがある20。一方事業者にとっても,特に訪問介護などの事業所数が増加し競争が激化するなかで,現行の介護報酬水準では経営が厳しく,介護従事者に対する十分な処遇を確保することが難しいため,人材の確保・育成が困難となっている21。このような状況に危機感をもった政府が2008年5月,「介護従事者等の人材確保のための介護従事者の処遇改善に関する法律」を制定するなかで,2009年の介護報酬改定における報酬引き上げに対して大きな期待が寄せられた。同年10月,政府与党が「介護従事者の処遇改善のための緊急特別対策」を策定し,次の介護報酬改定率をプラス3%とすることを決定した。この決定を受け具体的な議論を行った介護給付費分科会では,①介護報酬はサービス提供の対価として事業者に支払われるものであり,個別の事業者や労働者の状況は様々であるなかで,介護報酬の引き上げが介護従事者の処遇改善に結びつくか,②介護報酬の引き上げだけでなく,事業主への助成や経営効率化のための経営モデルの提示が必要である,③介護従事者の賃金水準の向上だけでなく,研修やキャリアアップのシステムを導入することが不可欠であるなどといった意見を示した22。特に介護従事者の人材確保対策として,①負担の大きい夜勤や認知症・重度者対応,サービス提供責任者の業務などに対する人員確保を行う場合に対する評価を行う,②介護従事者の能力や専門性などのキャリアに着目した評価を行うため,介護福祉士の資格保有者や常勤職員,一定以上の勤務年数を有する者を一定割合雇用する場合に対する評価を行う,③介護従事者の賃金の地域差に20 介護労働安定センター「介護労働実態調査結果」等参照。21 厚生労働省「介護事業経営概況調査結果」等参照。22 第63回介護給付費分科会(2008年12月26日)資料(「平成21年度介護報酬改定に関する審議報告」)参照。