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6 高知論叢 第100号『日本書紀』神武天皇紀には,「治此西偏」とある。飯田武郷『日本書紀通釈』では「西偏の日向の国にましまして高千穂の宮に御政治めす8」と読んでおり,これはマツリゴトシロシメスと訓ずる事が....

6 高知論叢 第100号『日本書紀』神武天皇紀には,「治此西偏」とある。飯田武郷『日本書紀通釈』では「西偏の日向の国にましまして高千穂の宮に御政治めす8」と読んでおり,これはマツリゴトシロシメスと訓ずる事ができる。また,神武天皇にも「始馭天下之天皇」ハツクニシラシシという呼称を与えている。『神武天皇続紀』には「辛酉年春正月庚辰朔天皇即帝位於橿原宮9」を飯田武郷はアマツヒツキシロシメスと訓じた。『日本書紀』崇神天皇紀には「詔ちんはじめてたかみくらいをうけたまわりて曰朕初承天位くにいえ獲を保たまつことを宗廟えたり」崇神天皇には天神地祇共和,百穀用成,天下太平という褒め言葉を与えている。しかし『古事記』の「謂所知初国之御真木天皇」の様なシラスの文字はない。飯田武郷『日本書紀通釈』では孝徳紀の,始治国皇祖之時もハツクニシラシシと訓じている。シラスの用例は『古事記』ほど多くはないものの,神代における神々の葦原中国の統治においても“治らす”が頻繁に使われている。『日本書紀』において,神々が治らしめる事に神学的価値を与えた言葉は,後述する稜い威つである。②ウシハケル神シラスは天皇による私的支配を意味せず,天孫神の降臨によるアメノシタをシラシメル皇国の概念であるに対して,大国主神の支配に使われた宇う志し波は久くという語は領域を私的に支配するものとされた。これは本居宣長がことさら強調したものではなく,井上毅による独自の『古事記伝』解釈であった。本居宣長がウシハクを最初に説明した箇所は,井上毅が引用した崇神天皇巻が初出ではなく,冒頭の『古事記神代一之巻』『古事記伝三之巻』神代一之巻冒頭から書かれている。その箇所は「天地初発之時於高天原成神名天之御中主神」アメツチノハジメノトキタカマノハラニナリマセルカミノナハ アメノミナカヌシノカミとある。本居宣長はこれについて次のように述べた。「宇斯を主人と書ることも見えたり」「主(ヌシ)は大人(ウシ)と同言にて能宇斯ノウシのツヅマれるなり,宇斯を主人と書く」となる。そして「宇う志し波は久く(ウシハク)8 飯田武郷『日本書紀通釈』第二巻明治書院明治35年1072頁9 同上書1214頁