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107 研究ノートホワイトカラーにおける選抜と熟練形成1岡 村 和 明  1 問題の所在労働市場の効率性を議論する際に避けて通れないのが,特定企業の中で独自に形成される企業特殊熟練(Firm Specific Skills)....

107 研究ノートホワイトカラーにおける選抜と熟練形成1岡 村 和 明  1 問題の所在労働市場の効率性を議論する際に避けて通れないのが,特定企業の中で独自に形成される企業特殊熟練(Firm Specific Skills)の存在である2。企業特殊熟練を規定しているのは企業内における訓練機会(Training Opportunity)であり,訓練機会を通じた仕事経験の広さ,深さが企業固有の不均衡過程に対処する企業特殊熟練を規定すると考えられる。本稿の目的は,企業内における訓練機会として管理職の“選抜”に注目し,特に“遅い選抜”という定型的事実がホワイトカラー労働者の熟練形成に及ぼす効果を定量的に検証する点にある3。遅い選抜が企業特殊的熟練形成に及ぼす効果についての理論的研究としては,Prendergast(1992),Kiyotaki (2004) が代表的な先行研究として挙げられる。Prendergast (1992) のモデルによれば,企業特殊熟練の収益率が高くかつ外部労働市場があまり競争的でないケースでは,早い段階での労働者の選抜を行わずに,労働者の能力を隠した“遅い選抜”を通じてより多くの労働者に企業特殊熟練形成を促すのが望ましい。またKiyotaki(2004)は,昇進競争におけ高知論叢(社会科学)第101号 2011年7 月1 本稿の作成に際し,2009年度関西労働研究会夏合宿参加者より大変貴重なコメントをいただいた。また分析にあたり,東京大学社会科学研究所付属日本社会研究情報センターSSJ データアーカイブより「管理職のキャリアとホワイトカラーに関する国際比較調査1995~97(労働政策研究・研修機構)」個票データの提供を受けた。この場を借りて,感謝申し上げる。2 Becker(1964)を参照のこと。3 選抜に関する実証研究の包括的なサーベイを行っている論文として,Uehara(2009)が挙げられる。