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108 高知論叢 第101号る敗者復活戦(Consolation Match)が若年労働者の努力インセンティブを低下させるものの,それ以上に全体の努力水準が高まる効果を有する点を明らかにしている。ただこれらのモデルからは,“....

108 高知論叢 第101号る敗者復活戦(Consolation Match)が若年労働者の努力インセンティブを低下させるものの,それ以上に全体の努力水準が高まる効果を有する点を明らかにしている。ただこれらのモデルからは,“遅い選抜”の意味,つまりどのような選抜をどのくらいの期間に渡って行うべきか,という点について推論を導くことは出来ない。その一方で,小池(2005)は遅い選抜が企業特殊熟練形成に及ぼす効果について有用な分析枠組みを提示している。小池(2005)は,選抜の指標として「第一選抜出現期」,つまり社内資格において昇格に差がつく時期と「よこばい群出現期」,つまりこれ以上昇格しない人たちが一定程度出現する時期を挙げ,「遅い選抜が高度な技能を持つ中堅層を形成しやすい(小池(2005) p. 78)」という推論を行っている。本稿の試みは,上記の「第一選抜出現期」および「よこばい選抜出現期」が遅くなるという事実を“遅い選抜”とみなし,それがどのように“高度な技能を持つ中間層を形成している”のかを定量的に検証する点にある。このような分析を通じて,企業特殊熟練が形成される過程の一端を明らかにすることが出来るだろう。まず次節では,選抜が熟練形成を促すメカニズムについての理論モデルを概観する。続く第3節で実証分析を行い,最後に結びとする。2 分析枠組み小池(2005)でも述べられているように,企業内における労働者選抜の仕組みは「リーグ戦」と「トーナメント」に分けられる。入社して「第一選抜出現期」までは「リーグ戦」を通じた競争であり,そこで昇進する(シード権が与えられる)労働者の選抜,つまり“暫定”leader の選抜が行われる。「第一選抜出現期」から「よこばい群出現期」まではシード権付のトーナメント競争とみなすことが出来,この期間を通じてエリート候補(“真の”leader)の選抜が完了する。まず“暫定”leader を将来の昇進にとってより有利な訓練機会に配置して競争させる仕組みは,Meyer(1991)が指摘するように,労働者の能力情報に関するラーニングをより効率的にする。しかしながらPrendergast(1992)が指摘するように,“暫定”leader により密度の高い訓練機会を与えた上で競争させ