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ホワイトカラーにおける選抜と熟練形成109ることは第一選抜からもれた“暫定”follower の昇進可能性を低下させ,その結果,“暫定”follower が技能形成を行うインセンティブを抑制することが考えられる。一方で,L....

ホワイトカラーにおける選抜と熟練形成109ることは第一選抜からもれた“暫定”follower の昇進可能性を低下させ,その結果,“暫定”follower が技能形成を行うインセンティブを抑制することが考えられる。一方で,Lazear and Rosen( 1981) は,労働者の能力が全ての人の間に知れ渡っている状況下では,能力の低い人にハンディキャップを課すことで全体としてより高い努力水準が達成されることを指摘している4。この場合,もし先の「第一選抜出現期」までの「リーグ戦」競争が労働者の能力を選別し,労働者間の序列をつける手段であるとすれば,「よこばい群出現期」までの「シード権付きトーナメント競争」の中で“暫定”leader に一定のハンディキャップを課すことは,“暫定”のleader,follower 双方の努力水準を高める有効な手段となりうる5。Lazear and Rosen(1981)のモデルから導かれるひとつの仮説は,「第一選抜出現期」までの「リーグ戦」を通じて労働者の能力評価が確定するという仮定の下,特により長期の「シード権付きトーナメント競争」を行う企業ほど,第一選抜からもれた“暫定”follower のモチベーションを維持するために彼ら(彼女ら)に高い訓練機会を提供するというものである。いわば「シード権付きトーナメント競争」の過程で“暫定”follower により高い訓練機会が提供される結果,“暫定”follower においてより広く深い熟練形成が促されることになる。この過程で形成される技能が,“遅い選抜”により形成される高度な技能の内実である,というのがここで提示する仮説である。次節では,使用するデータを説明し,上記の仮説をアンケート・データに基づいて検証する。3 実証分析3-1 データ及び実証モデル本稿で用いたデータは,日本労働研究機構が1996年に行った「管理職のキャ4 この点は,McLaughlin(1988)において分かりやすく整理されている。5 ハンディキャップが競争者の努力水準に及ぼす効果は,“互いに能力が拮抗した状況下での競争がより高い努力水準を促す”,という効果として解釈することが出来る。例えば,Chan, Courty, and Hao(2009, P. 26)を参考のこと。