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118 高知論叢 第101号を与えるための仕事経験機会が与えられる。この「シード権付きトーナメント競争」の期間の長期化を「遅い選抜」と解釈すれば,ここでの仕事経験を通じて形成される技能こそが「遅い選抜」を通....

118 高知論叢 第101号を与えるための仕事経験機会が与えられる。この「シード権付きトーナメント競争」の期間の長期化を「遅い選抜」と解釈すれば,ここでの仕事経験を通じて形成される技能こそが「遅い選抜」を通じた高度な技能であるといえよう。4 むすび本稿では,企業特殊熟練が形成される訓練機会の中で特に選抜に焦点を当て,選抜時期がホワイトカラー労働者の仕事経験に及ぼす効果を,アンケート・データに基づいて検証した。その際,特に「遅い選抜が高度な技能を持つ中堅層を形成しやすい(小池(2005)p. 78)」という定型的事実の意味を明らかにすることを主眼として分析を行った。本稿が採用した分析枠組みは,小池(2005)において提示された「第一選抜熟練期」および「よこばい群出現期」という概念である。「第一選抜出現期」及び「よこばい群出現期」が幅広い層の労働者の熟練形成に効果を及ぼすメカニズムとして,本稿では以下のようなストーリーを提示した。まず入社してから「第一選抜出現期」まではいわばリーグ戦であり,その過程において“暫定”leader が決定される。「第一選抜出現期」の後,“真の”leader が確定する「よこばい群出現期」までの間は,“暫定”leader と“暫定”follower の間での「シード権付きトーナメント」が行われる。しかしながら,より訓練機会の多い“暫定”leader との競争に際して,“暫定”follower の技能形成インセンティブが損なわれてしまう可能性があることから,後者に対してより密度の高い仕事経験機会が提供される。ここで“遅い選抜”とは「シード権付きトーナメント競争」の長期化を意味しており,トーナメント競争における逆ハンディキャップを通じて“暫定”follower が修得する技能が,知的熟練を含む企業特殊熟練の内実である。上記のような観点から,選抜時期と仕事経験の関係を統計的に検証したところ,特に製造業において上記の仮説を支持すると思われる結果が得られた。つまり製造業において,まず「第一選抜出現期」の長期化は入社してから現役職に就くまでの年数が短い(つまり,昇進が早かった)労働者の仕事経験の機会を増やしていた一方で,入社してから現役職に就くまでの年数が長い(つまり,