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ホワイトカラーにおける選抜と熟練形成119昇進まで時間がかかった)労働者の仕事経験機会を抑制している。この結果は,梅崎(2005)が指摘するような,決定的な選抜が行われる前の仕事序列競争の存在を示唆しており....

ホワイトカラーにおける選抜と熟練形成119昇進まで時間がかかった)労働者の仕事経験機会を抑制している。この結果は,梅崎(2005)が指摘するような,決定的な選抜が行われる前の仕事序列競争の存在を示唆しており,「第一選抜出現期」を通じて外部からは観察出来ない,仕事経験の“質”を通じた選抜が進んでいると考えられる。しかしながら,「よこばい群出現期」の長期化は入社してから現役職に就くまでの年数が短い労働者の仕事経験を抑制する一方で,入社してから現役職に就くまでの年数が長い労働者の仕事経験機会を増やしている。この結果が,先のストーリーを支持するかどうかはさらなる検証が必要である。最後に今後の課題を述べて結びとしたい。まず本稿で使用したアンケートは管理職を対象としたものであり,その点で推定結果にバイアスが生じていることは否めない。また,仕事経験がどれだけ労働者の技能を反映しているかという点,さらに選抜時期と仕事経験双方の内生性についても検証する必要がある。国際比較を通じて今回の推定結果の頑健性をテストすべきであるが,転職経験のない労働者にサンプルを限定した場合,特に欧米のサンプルではセレクション・バイアスが強く生じると考えられる。転職経験者を含んだサンプルで選抜の効果をどのように抽出するかが,今後の課題として挙げられよう。またいずれの推定も,説明力が低いという点が問題として挙げられる。決定係数や擬似決定係数を見る限り,本稿で使用した変数の説明力は10%以下であり,これらの変数だけでは選抜時期および仕事経験の決定要因を十分説明できない。コントロールしていない要因との相関を通じて,推定結果自体が不安定になっている可能性もある。残り90%を説明する変数の見つけ出すことも,今後の重要な課題である。参考文献梅崎修(2005)「早期選抜と仕事序列競争-製薬企業・MRの技能形成-」松繁寿和,梅崎修,中嶋哲夫(編著)『人事の経済分析-人事制度改革と人材マネジメント-』ミネルヴァ書房所収.小池和男(2005)『仕事の経済学 第3版』東洋経済新報社.小池和男, 猪木武徳(編著)(2002)『ホワイトカラーの人材形成 日米英独の比較』