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128 高知論叢 第101号ことで,高知県の自動車関連企業が置かれている状況を把握する。なお,本社およびグループ本社が高知県外にある企業を誘致企業,高知県内にある企業を地場企業と呼ぶことにする6。1 誘致企業....

128 高知論叢 第101号ことで,高知県の自動車関連企業が置かれている状況を把握する。なお,本社およびグループ本社が高知県外にある企業を誘致企業,高知県内にある企業を地場企業と呼ぶことにする6。1 誘致企業A 社A 社は1942年に創業し,本社を岡山県に置き,主に自動車用シートを生産している。1994年に高知工場を新設し,現在に至っている。高知工場では,自動車シート部品のうちカバー完成品を生産している7。高知県への進出の主な理由は,本社近郊でカバー完成品を生産委託していた外注先が高齢化してきたことと,労務費の抑制を目的としたものであったという。現在では,本社近郊の外注先,高知工場,中国拠点で1/3ずつ生産している。高知工場の生産能力は,2007年8 月時点で月産5,000~6,000台であり,人員は58名である8。工場長のみ本社から派遣しているが,他の従業員は現地採用している。進出当初は80名くらいの人員を抱えていたが,納入先の不祥事などで出荷が低迷したこと,従業員が退職しても補充してこなかったなどの理由により減少したという。A 社が認識している高知県で操業することのメリットとデメリットとはどのようなものだろうか。先に述べたように,岡山県(瀬戸内側の地域)に比べて,労務費の低さが最大のメリットのようである。では,一方のデメリットにはどんなものがあるのだろうか。A 社で指摘された最大の問題は,物流である。完成車メーカーであれ,部品サプライヤーであれ,自動車関連部品を生産するとかんばん方式がついてまわる。A 社は本社工場に向けて15時に宿毛を出発し,翌朝6 時に届けようと毎日1 便出している。この便は一般道を通って輸送しているが,高知市内で帰宅ラッシュによる渋滞につかまる場合があり,困るときがあるという。もし,四国の高速道路が無料であるならば,こうした問題をクリアでき6 以下で紹介する内容は2010年9 月上旬に高知県内の事業所でインタビュー調査やそこで示された資料に基づいている。協力してくださった皆様に記して感謝申し上げる。7 他のシート部品として,フレーム完成品,ウレタン完成品,ヘッドレスト,調節機能部品などがある(A 社会社案内を参照)。8 2010年9 月時点の人員構成は57名である。