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132 高知論叢 第101号4 誘致企業D 社1990年に高知工場を設立し,主に半導体装置向けの金型を製造する。本社は大阪府に置いている。2010年9 月時点で,高知工場の従業員は39名であり,本社からの出向はない。拠点間....

132 高知論叢 第101号4 誘致企業D 社1990年に高知工場を設立し,主に半導体装置向けの金型を製造する。本社は大阪府に置いている。2010年9 月時点で,高知工場の従業員は39名であり,本社からの出向はない。拠点間の役割分担は,本社で注文を受け設計を行い,高知で金型を製造し,インジェクションテストを本社で行っている。D 社は自動車関連部品を多く生産していない。しかし,1995年ころ,同じ工業団地に立地する企業からの紹介でいくつか仕事を受注したが,半導体関係の受注が好調で忙しく,自動車関連部品の仕事は収益的にも厳しかったので,それ以降続かなかったという。その後,2005年ころから自動車関連部品を製造する部品サプライヤーに対して,射出成形用の金型をいくつか納入するようになっている。D 社が高知県に進出した理由は,1987年ころ,本社を置く大阪府では,敷地が狭くなり,取引先の銀行が高知県に工場用地を探してきたことがきっかけになった。視察のために来高したところ,歓待を受けたこともあって高知県での工場建設に傾いた。本来は,主要な取引先の半導体工場があった福岡県に進出予定であったが,土地代が高かったために断念し,高知県宿毛市に決定することになった。では,高知県に立地するメリットとはどのようなものがあるのだろうか。上述の通り,都市圏に比べて,工場用地を安価で確保しやすかったようである。それに加えて,高知県,とりわけ,宿毛市では,人材が集まりやすく,進出時は20名程度の人材が集まったという。加えて,この地域の人たちの特徴として,のんびりで欲がないという面をもっているが,納期を合わせるために残業や徹夜で仕事を仕上げてくれるという。一方で,デメリットには,これまでみた企業と同様に物流の問題に直面している。半導体メーカー向けの金型の事例にはなるが,納入企業から焼入れ,メッキは指定工場で行うようにとの指示が入る。そうなると,実際の金型製作に当てる時間が関西圏で操業する場合よりも2日ほど短くなる。また,D 社は兵庫県内の製造拠点で使用される金型を多く生産しているが,時間的な問題から修理は本社工場で対応するほか無い状況であり,物流リードタイムに起因して多くの問題が生じているようである。