101号

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高知県自動車部品関連会社の交流会の狙いと現状137たことが受注の妨げになっている可能性がある。納入先がこうした意思を持つ理由は,量産中にトラブルが発生した場合,高知県だと往復の輸送だけで2日から3日かか....

高知県自動車部品関連会社の交流会の狙いと現状137たことが受注の妨げになっている可能性がある。納入先がこうした意思を持つ理由は,量産中にトラブルが発生した場合,高知県だと往復の輸送だけで2日から3日かかるため,瞬時に対応できないためである。H 社は福岡県を中心とする九州の納入先から「ここまで何時間かかる?」と聞かれた際,正直に「5~ 6 時間程度」と答えると,「韓国の方が近いんじゃないか?」と指摘されたと言い,誘致企業と同じ物流面でのデメリットを認識している。さらに,H 社はプレス部品を製造する取引先とのやり取りの中で,九州の完成車メーカーおよび1 次部品サプライヤーが量産発注する範囲は広島県西端が限界で,倉敷市水島では受注が難しいと認識している。このほかに金型製作で使用する鋼材調達と人材面でもデメリットを抱えているようである。H 社は鋼材を県外業者から調達しており,県内業者の鋼材の品質を評価していない。かつて県内で仕入れていた鋼材は反りがあった。仕入れた鋼材がたまたま大板のなかで,反りが目立つ部分だったのかもしれないが,現在調達している県外業者から購入した鋼材ではそういった問題が起こっていないとのことである。もし,調達できる鋼材の品質差が県内と県外の間で常態化しているのであれば,地場企業は県外企業に対してディスアドバンテージを抱えているのかもしれない。次に人材面では,金型製作ができる人材ストックが,高知県内にはほとんど皆無であるというデメリットがある。県外であれば,金型製作という職種で経験者を採用することができるが,高知県では「金型ってなんですか?」と質問するような人材を採用することもあり,そうした人材を教育し続け,安心して仕事を頼めるまでになるには5 年以上の月日を費やさなければならない。このような状況は欠員が生じたときや,業容を拡大したいときに不利に働く可能性が高いだろう。その一方で,従業員が主体的に残業や休日出勤を申し出てくれる環境があり,納入先から難しい納期指定を受けた場合でも,自信を持って納期を約束して受注することができるため,この点はメリットといえる。なお,こうした環境はH 社の経営環境が悪化し,それに伴って経営状況をガラス張りにして従業員に示したことも反映しているかもしれないが,根本的なところでは事業運営に協力的な人材が多いといえるのではないだろうか。