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138 高知論叢 第101号9 地場企業J 社J 社は農業機械部品を中心に,建設機械部品,船舶機械部品,精密板金関連,ボイラー用部品,各種産業用機械向けの精密板金溶接加工メーカーである。現在,J 社は自動車関連部....

138 高知論叢 第101号9 地場企業J 社J 社は農業機械部品を中心に,建設機械部品,船舶機械部品,精密板金関連,ボイラー用部品,各種産業用機械向けの精密板金溶接加工メーカーである。現在,J 社は自動車関連部品を生産していないが,魅力を感じ,関心を持って自動車産業を見つめている企業で,高知県からの誘いもあって交流会に参加している。このような企業が高知県内で自動車関連部品の生産に乗り出そうとするとき,どのようなメリットとデメリットを持つと考えているかを確認することは意味があると思うので,ここで紹介していきたい。J 社が想定する高知県のメリットのひとつは,人材が豊富で相対的に労務費を低く抑えられることである。その一方で,材料や燃料になるとコストアップ要因を抱えており,県外から材料や燃料を大量に仕入れる企業はデメリットになるという。高知県での材料や燃料の価格は,近隣の愛媛県や岡山県との比較においても数パーセントは高くなっており,その原因は運送費に収斂する。また,ものづくりの面では,高知県の地場企業のほとんどが「田舎のものづくり」を行っており,自動車関連部品を生産するならば,コンスタントに量産し,同時にコストも低減する「都会のものづくり」をしなくてはいけないと指摘する。一部の企業はJ 社が言う「都会のものづくり」を志向しているものの,多くの企業がコンスタントに量産することができない状況であり,このことが自動車関連部品を受注する際の高いハードルになると認識しているようである。Ⅲ 高知県自動車関連産業の発展の阻害要因ここまで見てきたように,高知県に立地することによって生じるメリットとデメリットを比べた場合,デメリットの方が多く,自動車関連産業の発展可能性を後退させるような要因が多いようにみえる。この節では,阻害要因を整理していく。そして,そうした弱みを如何にクリアしていけばよいか,言い換えれば発展可能性を高めるにはどんな取り組みを行えばよいのかを考えていきたい。