101号

101号 page 142/162

電子ブックを開く

このページは 101号 の電子ブックに掲載されている142ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
140 高知論叢 第101号ライヤーはそうしたリスクを織り込んで発注先を選別するため,高知県に立地することは受注を妨げる阻害要因になってしまう。これら三つ以外にも,開発,購買,調達の各拠点から離れることは,....

140 高知論叢 第101号ライヤーはそうしたリスクを織り込んで発注先を選別するため,高知県に立地することは受注を妨げる阻害要因になってしまう。これら三つ以外にも,開発,購買,調達の各拠点から離れることは,様々な情報を入手しづらくなる。そのため,情報を入手するチャネルを完成車メーカーや1次部品サプライヤーの近在に立地する企業よりも意識的に構築することが重要になる。2 人材面での問題人材面でも大きくふたつの問題を抱えている。前節で確認したように,高知県は,都市圏に比べて,人件費が安く,豊富に人材を供給する地方である。しかし,工業高校などを卒業した新卒の生徒は高知県内の事業所に絞って希望するわけではない。ものづくりに携わる人材を育てようとする誘致企業や地場企業は,高校生を招いて工場見学を開催したり,インターンシップを受け入れたり,工場にある設備を使った実習に協力したりしている。しかし,そうした機会の中で,採用したくなる生徒を見出しても,その生徒は県外に職を求めることが少なくないと言う。このように人材は豊富であるが,企業にとって育てたくなるような人材が誘致企業や地場企業に対して潤沢に供給されているかどうかは別問題なのである。もうひとつの問題は,キャリアを積んだ技術者ストックが高知県内に少ないことである。今回の調査では,とりわけ金型製作や鋳造といった分野で顕著なようである。この問題は急な欠員や,業容拡大を計画した際に,大きく影を落とすことになる。タイミングよくU ターンやI ターンで採用ができなければ,長い月日をかけて育て上げなければならない。欠員が生じた場合なら,日々のオペレーションに躓き,受注を減らすかもしれないし,業容拡大を目指している場合であれば,テンポダウンは受け入れざるを得なくなる。3 地場企業が抱える経路依存的な問題ここまでは高知県に立地することによって直面する外部環境の問題であった。誘致企業と地場企業ともに,さまざまな経験をして,今日まで事業を営んでき