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142 高知論叢 第101号なく,それを繰り返し安定的にすることができる技術力を養わなければならず,組織としての忍耐力がなければ,身につけることはできないのである。こうした事情を踏まえて,財務的な裏づけも参....

142 高知論叢 第101号なく,それを繰り返し安定的にすることができる技術力を養わなければならず,組織としての忍耐力がなければ,身につけることはできないのである。こうした事情を踏まえて,財務的な裏づけも参入に際しては必要になってくるだろう。他の事業で安定的な収益を確保できている時期に参入しなければ,財務上の問題を引き起こす可能性があり,収益性や資本力が低い場合はボトルネックになってくる。4 阻害要因を乗り越えることは可能か?物流面,人材面,地場企業が抱える問題に分けて,それぞれが自動車関連産業の発展を阻害する要因になりそうなことを示してきた。果たして,これらの阻害要因を乗り越えることができるのだろうか。わたしは高知県に立地することによって生じるメリットを活かしながら,真摯に経営改善する取り組みや,新しい仕組みづくりをすることで,阻害要因を乗り越えて発展する可能性があるように考えている。前節でも指摘があったように,工場用地の安さ,労務費の低さ,中小企業と行政との距離が近く多様な助成金やスキームの活用を支援する力など,大都市圏はもちろん他県でも簡単に享受できないメリットがある。これらをフル活用することによって,多くのコストアップ要因を打ち消すことができるのではないだろうか。それに加えて,品質と価格を一定に保ちながら決められた納期に供給する能力をつけることは一朝一夕には難しいが,徐々に身につけていくプロセスにおいて,予期せぬ残業や休日出勤に応じてくれる高知県人の気質をうまく活用できそうである。また,誘致企業F 社では,宿毛工場がF 社の中で最も綺麗にオペレーションされており,整理整頓が基本であるものづくりにとって,得がたい人材を確保しているともいえる。そして,このような人材は,県内各地の有効求人倍率の低さもあって,転職することなく,同じ企業で長く働こうとするインセンティブが働く。これをうまく活用して,教育訓練を計画的かつ継続的に実施すれば,時間はかかるが,社内で多様な技能を持つ人材ストックを蓄えることも夢ではない。以上のように人材面の良いところを余すことなく引き出す努力をすることで,時間をかければボトルネックを解消するこ