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152 高知論叢 第101号過性の成果を追い求め,つぎからつぎに,新しいスローガンを掲げていては,組織は疲労するばかりで,何も身についていないことがほとんどである。確かに,従業員は同じことに繰り返し,繰り返....

152 高知論叢 第101号過性の成果を追い求め,つぎからつぎに,新しいスローガンを掲げていては,組織は疲労するばかりで,何も身についていないことがほとんどである。確かに,従業員は同じことに繰り返し,繰り返し取り組まされることに嫌気がさし,モチベーションが上がっていないという状況を経営者が目にすることがあるだろう。しかし,その姿を見るのが嫌だからといって,新しい取り組みを与えれば,従業員はやる気を持つかもしれないが,一連の取り組みは時間を空費しただけであって,従業員の集合体である組織には浸透しないのである。継続性がものを言う自動車関連産業での発展ストーリーを描く際に,もっとも重要で,もっとも難しい課題は,成果が表われ難い取り組みであっても,経営者は強い意志をもって,指揮し続けることなのである。そして,小手先のモチベーション向上策を練るのではなく,持続的に従業員のモチベーションを維持できるような仕組みを合わせて検討する必要性が生じてくるだろう17。同時に,ここまでを振り返ったとき,自動車産業を離れても経営者が継続的にサポートし続けなければならない事柄がありそうである。ミロクテクノウッドと廣瀬製紙の事例に学べば,自社が持つ技術の可能性を信じ,その新たなアプリケーションを見つけるために,技術をカタチにし続けてきた。技術者は自分たちが持つ技術に打ち込んで,アプリケーションを見つけることに熱中するのは世の常である。一方,経営者は厳しい状況のときは,すぐに売上になる技術を求めるし,逆に,活況のときには,売り逃さないでおこうと最大限受注できるような仕事に従業員を振り向けてしまいがちである。このような企業であれば,ミロクテクノウッドや廣瀬製紙のように,自らの技術を新しいアプリケーション(自動車関連の部品や材料)へ展開できないだろう。つまり,経営者は技術者が技術を新しく展開させようとすることを持続的にサポートすることが必要であり,覚悟を決めてその意志を示し,実践し続けなければならない。そして,それを担保するために財務的裏づけづくりにも目配りしなくてはならないのである。図表4 は,ここまでのストーリーをまとめたものであるである。自動車関連17 例えば,高知県経営品質協議会が開催している講演会,セミナー,研究会での議論が,モチベーション向上を目指す仕組みづくりに当たって,示唆を与えるかもしれない。