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日本財政の持続可能性に関する研究3財政維持可能性に関するドーマーの条件とはGDP 比政府債務残高が,一定以下で推移する条件である。ドーマーが示した定理は2,GDP 比国債残高をより拡大させないためには,基礎的財....

日本財政の持続可能性に関する研究3財政維持可能性に関するドーマーの条件とはGDP 比政府債務残高が,一定以下で推移する条件である。ドーマーが示した定理は2,GDP 比国債残高をより拡大させないためには,基礎的財政収支の均衡と,名目成長率>名目金利を条件とする。基礎的財政収支がたとえ一時的に赤字であっても,名目成長率-名目利子率> 0 の条件を充たせば,財政の持続可能性はあると見なす。すなわち,(国債発行残高/ 名目GDP 成長率)<(政府支出-税収)/(名目GDP)-(名目GDP 成長率-名目金利)×(国債発行残高/ 名目GDP)の成立を条件とする。また,ドーマーの条件では,成長経済の下ではプライマリーバランスを一定に保てば,国債残高/ GDP 比は収束して財政は破綻しない。以上のドーマー条件は,長期的な成長経済を前提にしたものであり,かつ戦時体制下における財政破綻を過小に評価したものであった。ドーマーによる,平時・戦時成長モデルは跛行的な成長を前提にした成長モデルであり,二度の世界大戦後の欧州経済や日本経済の破綻を前提にしていなかった。戦時経済は一時的なプライマリーバランスの均衡を考慮せず,戦争が長期化すれば財政破綻の可能性があることは歴史的事実である。第二次大戦以降1990年までにおける,日本経済の中長期的成長率は長期金利を上回る水準にあり,ドーマー条件は妥当性をもっていた。しかし,1990年以降における,日本経済の長期デフレ下においては,ドーマーの条件自体の有効性が疑われるようになった。この問題に関して,Henning Bohn は,財政の持続可能性の条件として,政府債務の持続的可能性のBohn 検定を1998年に示した。政府債務の持続的可能性に関するボーンの条件とは,公債残高の対GDP 比と基礎的財政収支対GDP比が正の相関関係を持っていれば政府債務は持続可能である3,とするものであり,この仮説をボーンはダミー変数を用いて実証した。ボーンが示した政府債務の持続可能性の条件は,前年度末公債残高対GDP2 “The Burden of the Debt and the National Income”,1944,AER E.D. ドーマー『経済成長の理論』1957(宇野健吾訳)3 Henning Bohn,“The behavior of U.S. public debt and deficits,”The Quartery ofEconomics,Vol,113,No.3(Aug,1998),949-963 by The MIT Press.