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4 高知論叢 第101号比が上昇したときには,基礎的財政収支対GDP 比を改善させる財政運営を行うことである。換言すれば,公債残高が多くない時期は基礎的財政収支が赤字であっても,公債残高が,ある水準以上に大き....

4 高知論叢 第101号比が上昇したときには,基礎的財政収支対GDP 比を改善させる財政運営を行うことである。換言すれば,公債残高が多くない時期は基礎的財政収支が赤字であっても,公債残高が,ある水準以上に大きくなれば,政策主体が,基礎的財政収支を改善するように財政運営をすると,財政は破綻しないはずである。財政の持続可能性に関する研究はBohn の研究以降,日本における議論も活発に行われてきた。1990年以降におけるプライマリーバランスの悪化と財政債務の蓄積が如何に調整されるのか,発散する可能性と条件はないのかが論議がされてきた4。また,日露戦後財政の研究もある5。近年,一般会計だけではなく,一部特別会計,地方財政を含めた実証分析によって,財政赤字の持続可能性を否定する結果が導かれている6。本稿は明治以降から日中戦争期までの日本財政を対象とする。ボーンの検定,すなわちダミー変数を用いて,公債残高対GDP 比と基礎的財政収支対GDP比が正の相関関係を持っていれば政府債務は持続可能であるとする仮説が,現実の日本経済の歴史研究に有効か否かを試みるものである。本稿では,主成分分析,因子分析によって,財政が発散し,あるいは収斂するための主成分を見いだし,その条件を明らかにする。ただし本稿では,明治初年における統計上の制約と昭和16年(1941)以降における戦時異常値の問題から,多くの統計値について1885~1940年の数値を用いている。日本の経済史統4 鎮目雅人「第 2 次大戦前の日本における財政の維持可能性」(未定稿(神戸大学経済研究所2007. 3,土居丈朗「地方債の持続可能性を探る~自治体の公債管理政策を検討する」,『地方財務』,2000年11月号,2-12頁,土居丈朗「裁量的財政政策の非効率性と財政赤字」,貝塚啓明編『財政政策の効果と効率性』 37-63頁,東洋経済新報社,2001年7 月,土居丈朗「我が国における国債の持続可能性と財政運営」, 井堀利宏・加藤竜太・中野英夫・中里透・土居丈朗・佐藤正一「財政赤字の経済分析:中長期的視点からの考察」,『経済分析 政策研究の視点シリーズ』,16号,土居丈朗『地方財政の政治経済学』,東洋経済新報社,2000年6 月,第2 章,土居丈朗「政府債務の持続可能性の考え方」,財務省財務総合政策研究所PRI Discussion Paper Series No. 04A-02,土居丈朗「我が国における政府債務の持続可能性と財政運営」Keio Economic society Discussion paper Series No. 9905.1999. 7,中田大悟,森川正之「社会保障制度と財政:財政の持続可能性・効率性・公平性」RIETI Policy Discussion Paper Series 10-P-011 2010年11月5 小野圭司「明治末期の軍事支出と財政・金融-戦時・戦後財政と転位効果の考察-」防衛省防衛研究所『戦史研究年報』第11号(2008年3 月)6 平井健之「一般政府における財政赤字の持続可能性について」『香川大学経済論叢』第82巻第3 号2009年12月