高知論叢102号

高知論叢102号 page 117/222

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限界集落における孤立高齢者への生活支援(下) 115なった。友人は亡くなった。隣近所とは週1回程度会う。神祭は年3回やっており,地区の一斉清掃もある。緊急時は娘に連絡するが,迷惑をかけたくない。地域の将来....

限界集落における孤立高齢者への生活支援(下) 115なった。友人は亡くなった。隣近所とは週1回程度会う。神祭は年3回やっており,地区の一斉清掃もある。緊急時は娘に連絡するが,迷惑をかけたくない。地域の将来は怖い。集落共同事業は,昔であれば一緒にやれたが,神様も異なるし,その集落も自分の集落を欲しがらない。住民と役場支所の関係は不便になったし,地区外から職員が来ても誰かわからない。合併後は役場の距離が遠くなり,合併して良かったことはない。大野見地区には小学校が一つになったが,寂れる。しっかりとした教師と教育委員会がいれば,地区外に子どもを通学させる親は少ないだろう。子どもが少なくなったことは寂しく感じる。近くのコーヒー店に人が来ない。自分はここで暮らし続けたいし,子の所には行かない。自分の体の健康を保ち,自動車に気をつけていれば不安はない。Ⅲ 小括香美市物部町と中土佐町大野見地区の少数世帯集落における高齢者の生活実態調査から浮かび上がる特徴が見られる。高齢者の多くは国民年金と自家消費用の農作物で生計を立てている。しかし,農作物は鳥獣被害を受けることが多い。ごみ収集車や移動スーパーが来てもらえない地域もある。タクシー費用の問題,自家用車運転の不安,公共交通の欠如など,移動の問題が生活困難をもたらしている地域もある。子どもとは離れて暮らし,時折の交流はあっても,子どもが地域に戻り住むことはないと考えられている。近隣づきあいが地理的に難しい地域もあり,民生委員が二つの地域を担当していたり,民生委員,役場職員,保健師,社会福祉協議会職員といったキーパーソンがほとんど姿を見せない地域もある。水の維持管理や道路の整備・管理など,住民の自助,共助だけでは困難な生活課題も浮かび上がっている。そのような地域的な孤立化が浮かび上がる反面,居住期間が長く,その地域生活に慣れていることもあり,寂しさを感じることはあまりない。ただし,特別の楽しさも感じていないという様子がうかがえた。高齢者は,元気なうちは