高知論叢102号

高知論叢102号 page 164/222

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162 高知論叢 第102号 表16 在西欧日本電気機械企業の現地調達を推進するための取り組みの事例(出所)大石(2004)pp. 22-24 「現地調達部品は,品質管理の点数化・レベリング(納入時間・不良品率などに関して....

162 高知論叢 第102号 表16 在西欧日本電気機械企業の現地調達を推進するための取り組みの事例(出所)大石(2004)pp. 22-24 「現地調達部品は,品質管理の点数化・レベリング(納入時間・不良品率などに関して点数化)を行い,点数が悪いと指導を行う。基本的には,月に一度の品質管理ミーティングで指導。さらにエンジニアがサプライヤーの工場へ行き,問題点(例えば部品が乱雑に置かれているなど)を指摘して指導を行う。その後,サプライヤーに,問題解決の事後報告を求めている。もちろん,問題が生じた場合,もっと頻繁に,毎日でもサプライヤーの工場へ出かけている。現在,15~16社のサプライヤーから調達を行っているが,大きな問題は無い。品質管理は,大きな問題が生ずる前に, 全体的状況が許容範囲の外に出ていく傾向が示された段階で, サプライヤーへの指導を行い,問題の発生を事前に摘むようにしている」(在イギリス電気回路等機器企業) 「工場操業当初は,非常に問題が多かった。5 ~ 6 年かけて,ようやく,使い物になる部品を納入できるサプライヤーをセレクトし育成した。そして,10年以上のトレーニングの結果,大きな改善がなされ,例えば不良品率も大幅な低下を達成している。サプライヤーには,品質・価格・納期などに関する当社の考え方を説明し, 日常的にミーティングをもち, そして教育を行ってきた。また,サプライヤーを当社のカイゼン発表会に招き,また日本や中国へ連れて行き生産現場を見せている。当社は,現在では,サプライヤーとの間でお互いに見積の詳細の全てを出し合って,検討・相談・アドバイスをしている。例えば,サプライヤーの見積の提示価格が高く,その理由が原材料のコスト高であれば, 安い原材料納入業者を紹介するなどの対策をとるようにしている。このような,お互いの手の内を開示するような関係は,欧州では普通は有り得ないだろう。このようにしてサプライヤー育成をしてきたわけだが,実際のところ,サプライヤーの意識(なぜこれほどの精度が必要なのか,ある程度の不良品は仕方が無いじゃないか,納入価格が次第に低下するのは理解できないなど)を変えることは非常に難しかった」(在フランス事務用機器企業) 「現地調達率は,90年代半ばの操業開始時には3 割程度だったが,近年は9 割を超える水準に上昇している。現地調達部品は,日本部品よりコストは低いが,精度が劣り不良品も多いといった問題がある。しかし,現地調達を行う以上,これらの問題は受け入れざるをえない。日本で作成された図面のうち, 譲れない部分と譲れる部分を仕分けて, 日本の技術陣と現地サプライヤーとの間の調整を行いながら,現地調達を拡大してきた。ここで重要なのは,顧客承認であった。顧客が,価格と精度のバランスを理解し,その上で当社製品を信頼し承認し購買してくれたことが, 現地調達率引き上げ達成のキーポイントであった。このような現地調達拡大の過程で,サプライヤー育成も行ってきた。現在まで,とくに成功したと言える例は1つだけだが。これは, 当社製品にとっての中心部品を製造するサプライヤーを育成したものである。様々な技術やノウハウを無償で教え,また議論を行い相互理解を深めた。さらに,社長を日本へ連れて行き,当社の本社や,部品サプライヤー企業を見学させたりもした。その結果,当社の息のかかった部品メーカーが,当社の生産ラインの延長上にいるという状況になった。サプライヤー育成は,コストがかかるが, 良いものを安価で作ってもらえれば, 最終的には当社の利益になると考えている」(在フランス自動車用電気部品企業) 「サプライヤー約20社に対し指導を行っている。主には製造にノウハウが必要な部品のサプライヤー。また, サプライヤーを選ぶときには,2 次・3 次のサプライヤーまで見に行き, 場合によっては(それほど数は多くないが)2 次・3 次のサプライヤーにまで指導を行うこともある。サプライヤーとは,定期的なミーティングを行っている。頻度は相手企業による。最低で年に1 回だが,月に1 回あるいは週に1 回のケースもある。最近は,サプライヤーを日本へ送り,日本企業との交流会に参加させることも試みている。指導を行う場合, 日系企業との取引のある企業は, カイゼンなどの考え方を理解しているので対応しやすいが, そうでない企業の場合,考え方から理解してもらう必要があるので大変」(在スペイン事務用機器企業)