高知論叢102号

高知論叢102号 page 165/222

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中欧における日本電気機械企業の現地調達163記されているように,在西欧企業の中には,長い年月をかけて,現地サプライヤー企業の工場現場まで入り込むことができるようになっている企業もある。しかし,そのような....

中欧における日本電気機械企業の現地調達163記されているように,在西欧企業の中には,長い年月をかけて,現地サプライヤー企業の工場現場まで入り込むことができるようになっている企業もある。しかし,そのような日本企業においてさえ,日本企業と現地企業との間で,信頼関係を築き互恵的関係を形成するのは容易なことではない。日本企業の多くは,日本的システムの「適用」を理想としているが,当然ながら日本的システムをそのまま導入することはできず,何らかの「適応」となる。その過程では,長期に渡る辛抱強い擦り合わせの努力が必要となる。前節でみたように,中欧でも,現地部品企業に対する支援・指導をしている企業の例がある。しかしまだ開始されたばかりで,支援のレベルも初歩的段階にとどまっている。しかし,在西欧日本企業が,経験が長い時間を経て現段階に到達したように,中欧でも将来的にはより高度な企業間関係を築いていく可能性はあると思われる。日本企業の側は,西欧を含む世界各地で経験を積む中で調達に関する日本的方式をより適切に中欧地域で活用する能力を培ってきており,その一方で中欧企業の側も,世界市場で生き残るためにより効率的な生産・経営システムを確立することを望んでいるからである。中欧で聞き取り調査を行った企業の中に,在西欧現地法人で現地サプライヤー企業に対する支援・指導を経験してきた企業がある。その企業の回答者も,中欧現地法人に着任する前に,長年,西欧現地法人で仕事をした経験をもっている方であった。その回答が印象深いものであった。「現地調達は,そう簡単には良くならない。現地企業の考え方は変わらない。変わるのには時間がかかる。当社の親会社も西欧で30年かかった(在チェコ空調機器部品企業)」おわりに本稿では,中欧における日本電気機械企業の調達活動について考察を行ってきた。その結果を要約しておこう。第1 節では,中欧における日本企業の調達に関する先行調査研究の検討をおこなった。まず,ジェトロ調査では,在中欧日本企業の調達の中心は,まず「日本」,次いで「西欧」,そして「中欧」の3 地域であることが示されていた。産