高知論叢102号

高知論叢102号 page 166/222

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164 高知論叢 第102号業別では,「自動車」の調達が日本と西欧への依存を強く残しているのに対し,「電機」の調達はアジアの役割が高まりグローバル化の傾向があることが示されていた。ただし, 2 つの産業における....

164 高知論叢 第102号業別では,「自動車」の調達が日本と西欧への依存を強く残しているのに対し,「電機」の調達はアジアの役割が高まりグローバル化の傾向があることが示されていた。ただし, 2 つの産業における中欧での調達の相違については明確ではなかった。また,日本企業の調達に関する経営上の問題では,「品質」では大きな改善が見られるが,「コスト」については改善の度合いが低いこと,また近年でも「調達先の不足」という基本的な問題が根強く残っていることが示されていた。産業別では,「自動車」では「品質」が問題であり続け「コスト」も改善していないのに対し,「電機」では調達グローバル化の影響もあり「コスト」で改善がみられたが「納期」で改善がみられないという傾向が示されていた。次に,JMNESG 調査では,部品調達が全般的に「適用的でない(日本的でない)」という傾向があることが示され,これは中欧の伝統的な製造業の強さを反映したものであると分析されていた。ただし,中欧の製造業の強さは,産業により国により大きく異なり,それを中欧地域の一般的特徴とすることには困難があるように思われた。産業別では,相対的にみて,「自動車」は,現地調達率が低く,日本からの調達に依存しており,現地サプライヤーとの間で日本的調達方法が見られないのに対し,「電機」は,現地調達率が高く,現地企業からの調達が進み,現地サプライヤーとの間で日本的調達方法が実現しつつあることが示されていた。そして,このような結果は,中欧における日本の2 つの産業の成熟度の違いを反映していると分析されていた。第2 節では,中欧における日本電気機械企業の現地調達の状況について検討を行った。まず,「現地(進出国)調達率」については,全体平均で3 割弱の水準であり,業種別では「電機」で高く「自動車部品」で低いという傾向が示されていた。これは,第1 節で検討した先行調査研究の結果と同様の傾向であった。次に,現地調達の問題点として,「現地サプライヤーの不在」「現地サプライヤーの技術の低さ」「現地サプライヤーの経営の考え方の問題(あるいは現地サプライヤーの考え方が日本企業と異なること)」という3 つの問題があることが明らかになった。そして,このような調達問題を改善するための取り組みとして,「長期継続取引」や「技術指導」の取り組みが行われていること,しかし現状では成果をあげるには至っていないことが明らかになった。