高知論叢102号

高知論叢102号 page 216/222

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214 高知論叢 第102号を図るのは実際の根拠をもっていないと考えざるを得ない。法人化高知大学は,運営費交付金の削減や人件費削減などが押し付けられる中で,教員数を減らし,教員組織の再編として,社会経済学科の開設科目の中で専任教員数は19ポストにまで減っている。とりわけ,経済系のポストは,これまで学科の特徴として「経済学を中心ないし軸において法学,経営学,会計学,社会学,政治学等を幅広く社会科学を学ぶことができる」という標語を使ってきたわけであるが,授与する学位―経済学の実態を含めて,再構築が求められているといえる。1998年に人文学部2学科を3学科に分けた。分科の構想では,大学院も人文社会科学研究科で一本で一体のものとし,学科の仕切りを低くし学生の科目履修も可能とするので,教育,研究面での相互連携,交流が保てると考えていた。実際に,社会経済学科と国際社会コミュニケーション学科の両学科の授業科目表には,約10科目ほどが共通のものとして開設されている。国際社会コミュニケーション学科の開設する,アジア経済,経済思想などの科目を学生が履修するが期待された。また,地理学,歴史学なども含めて,人文学部の開設授業科目を広く選択し,履修可能となるように学部共通や自由選択科目の単位を設定したのもその意図を含んでいた。しかし,10年以上を経て,個々の教員の交代などもあり,学科の仕切りは高くなっているのが実態である。それは,学生の立場にしても同様で,社会経済学科の学生が国際社会コミュニケーション学科の教員の授業を社会経済学科の授業科目表の中から履修したとしても社会経済学科の授業を履修したという意識は薄い。その意味では,学生の学科へのアイデンティティーないし共同性は保持されているが,人文学部ないし他学科への共同性を持てなくなっている。教員の場合にも同様に学科の教育・研究空間へのアイデンティティーないし共同性は学科を越えることが難しい状況にあること否めない。このことは,黒潮総合科学部門の教員についても同様の印象を受ける。さらに,昨年の地域協働教育学部門の場合にも,その教員は,肩書きにその名称を使うことになり,学内外ではこの部門が身元証明となる。学生は教員のアイデンティティーを社会経済学科から離散させることになることが危惧される。