高知論叢102号

高知論叢102号 page 27/222

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国際会計基準審議会の金融商品会計基準プロジェクトにおける金融危機への対応25念を示し,金融負債の測定に唯一の測定属性として公正価値を用いることに疑問を呈している。このようにDP2008では,多様な測定属性が金....

国際会計基準審議会の金融商品会計基準プロジェクトにおける金融危機への対応25念を示し,金融負債の測定に唯一の測定属性として公正価値を用いることに疑問を呈している。このようにDP2008では,多様な測定属性が金融商品会計基準を複雑にしているという観点にたち,単一の測定属性を用いることがその解決方法となると考えられている。ここで述べられる単一の測定属性とは公正価値であり,金融商品会計基準の見直しは,どれだけの期間がかかるかわからないものの最終的にはすべての金融商品を公正価値のみで測定するという方向性を示したものであるといえる。また,ここでの問題は公正価値を用いることに対する反対ではなく,公正価値を唯一の測定属性とすることで他の多様な測定属性を用いることができなくなること,さらに公正価値測定による変動を損益に反映させることにあると考えられる。2. 2008年4月の金融安定化フォーラム(FSF)の提言とIASBの対応? 2008年4 月のFSF の提言2007年10月にG7の財務大臣と中央銀行総裁は,FSF に経済危機の原因と問題(causes and weaknesses)について分析を行い,勧告をするよう依頼した12。この成果としてFSF は,2008年4 月に「市場と制度の強靱性の強化に関する金融安定化フォーラム報告書」を公表し,その中でIASB に対して次の2 点について改善を行うよう勧告している。? オフバランス実体(off-balance entities)に関する会計と開示の改善13オフバランス実体の利用が市場参加者にリスク・エクスポージャーを過小評価させたとし,オフバランス実体に関連するリスク・エクスポージャーと潜在的な損失が財務開示で明らかに表示されなければならないとした。ここでの問題は,認識の中止(例えば,証券化を通して貸借対照表から資産を取り除くこと)と連結(例えば,特別目的実体)であった。さらに,IASB とFASB の会計基準が異なっていることも問題とされた。