高知論叢102号

高知論叢102号 page 36/222

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34 高知論叢 第102号2009年10月に日本で開催されたシンポジウムにおいて,「欧州の監督当局などからは,いわゆる“through-the-cycle”アプローチ(景気循環を考慮して,好景気時には引当金を積み増しし,不況時に....

34 高知論叢 第102号2009年10月に日本で開催されたシンポジウムにおいて,「欧州の監督当局などからは,いわゆる“through-the-cycle”アプローチ(景気循環を考慮して,好景気時には引当金を積み増しし,不況時にはそれを取り崩すことで金融の安定化を図ろうとする考え)に基づく減損が主張されているが,IASB としては,それは金融機関の監督当局がすべきことで,会計基準の領域ではないと反論している。会計とは実態を正しく反映するためのもので,損失が出ているときには損失が出ていると示すのが会計の役割だからである26」と述べている。6. 2009年金融危機諮問グループ(FCAG)報告書2008年12月,IASB はFASB との合意から金融市場において実務経験が豊かなリーダーから構成される上位の諮問グループとして,金融危機諮問グループ(FCAG : Financial Crisis Advisory Group)を設置した。FCAG は,2009年7月に公表した報告書の中で,IASB とFASB に対して次の4 点について勧告を行っている。? 有用な財務報告(Effective financial reporting)ここでは,財務報告は金融システムにおいて重要な役割を果たすものであることが述べられ,有用な財務報告は,基準の首尾一貫した(consistent)誠実な(faithful)適用と厳格で独立した監査と高品質の会計基準に依存するとしている27。このために,IASB は,金融商品会計基準の簡素化を最優先で行うべきであり,減損に関する基準のようにIASB とFASB の会計基準の相違をなくすよう収斂が実質的に進められること,また,発生損失モデル(incurred loss model)28の代替案を検討することを勧告している29。? 財務報告の限界(The limitations of financial reporting)IASB は,財務報告の限界を概念フレームワークプロジェクトの中で明らかにするとともに,財務報告の利用者もその限界を認めるべきであると勧告している30。