高知論叢102号

高知論叢102号 page 71/222

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69 論 説地下水法の現状と課題   城崎温泉事件から紀伊長島町水道水源保護条例事件へ1   松  本  充  郎  1 日本における水資源問題における地下水の位置付け日本は,気候的にはアジアモンスーン地域....

69 論 説地下水法の現状と課題   城崎温泉事件から紀伊長島町水道水源保護条例事件へ1   松  本  充  郎  1 日本における水資源問題における地下水の位置付け日本は,気候的にはアジアモンスーン地域に位置し,夏の雨と冬の雪による豊富な降水の恩恵を享受している。しかし,人口一人当たりの水資源賦存量は,他国と比較すると必ずしも多くない2。また,日本では,地表水は以前からより重要な水源であり,取水量ベースで約88% を占める(残りの12%が地下水)3。確かに,日本の総人口は減少しつつあり,国内での生産活動も停滞しているが,水不足は(地域差はあるが)依然として概ね夏季の都市部で発生することが多い。その理由は,水の需給を調整する仕組みが十分に機能していないためである。さて,水需給のミスマッチを解消する方法は,大まかにいうと4 つある。①地下水の利用,②地表水の流出ロスなどの削減(一般的にはダムや貯水池などの人工構造物の建設),③(多くの場合には農業用水から都市用水への)水融通,④処理水の再利用・水利用の効率化・脱塩装置の導入である4。高知論叢(社会科学)第102号 2011年11月1 本稿は,松本2008を大幅に加筆修正して行ったGroundwater Resources Associationにおけるポスター発表(2010年9 月15日)を邦語訳し,さらに加筆修正したものである。2 「 人口一人当たりの水資源賦存量={(単位面積当たりの降水量×面積)-(総蒸発量+総流出量)}/ 人口」である。日本は,雨は多いが面積の小さな国であり,インプットが少ない。また,雨は,梅雨から秋の大雨や台風(及び冬の降雪)の形で一度にまとめて降るため,その多くは河川から流出しやすい。需要サイドからみると,日本の農家の多くが水田耕作を行い,夏季に大量の水を消費している(国土交通省2011,56-60頁)。3 年間総取水量824億?のうち727億?が地表水・97億?が地下水であった(国土交通省2011,59頁,1-3-1)。4 Hanak et. al. 2009, p. 5.