高知論叢102号

高知論叢102号 page 78/222

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76 高知論叢 第102号1925年には,城崎とその周辺は北但大震災に見舞われ,町全体が被害を受けた。しかし,幸運にも帯水層には影響がなかった。1926年には,城崎町は,外湯の復興支援のために町債を発行し,資金を供....

76 高知論叢 第102号1925年には,城崎とその周辺は北但大震災に見舞われ,町全体が被害を受けた。しかし,幸運にも帯水層には影響がなかった。1926年には,城崎町は,外湯の復興支援のために町債を発行し,資金を供給した。多くの町民は,復興のために協力し,外湯の施設を拡張するために土地を提供したが,第1 次世界大戦以降の経済不況と相俟って,復興は容易でなかった。城崎町内のA が所有する土地において温泉が湧出しており,A は県規則に基づく温泉掘削許可を受けていたが,この旅館に内湯はなかった。X は父親であるA から,本件土地と旅館を相続により承継した。兵庫県知事(Y1)は,Xが相続によりA の温泉掘削許可を承継することを承認した。1927年には,X は,内湯を持ち浴客を入浴させるために,警察に対して営業用家屋増築許可の申請を行った。申請に当たって,X は増築の目的は自家入浴であるとしたが,当然,宿泊客が入浴することも可能であった。警察は,申請の許否について町長に相談した。さらに,町長は,許否について町議会及び財産区と協議したが,X が内湯の建設を意図していることを前提に拒否すべきであると回答した。1928年5 月10日,Y1は,規則3 条2 項に基づき,1930年3 月31日まで浴客による内湯の利用停止を命令した(規則3 条2 項は泉源の枯渇防止と公の秩序維持を目的とし,公安公益に影響がある場合に知事に温泉の使用停止を命ずる権限を与えていた)。しかし,1928年6 月,Y1は唐突にX に対して拡張工事を許可した。この件を巡って町内が混乱したため,県は泉源の調査を始め,1930年3 月22日には,県知事は規則3 条2 項に基づき1930年4 月1 日以降,当分の間, 2 回目の利用停止命令を出した。2-2-2 行政訴訟及び民事訴訟X はY1を被告として,2 度目の利用停止命令の取消訴訟を提起した(行政訴訟)23。まず,行政訴訟において主な争点となったのは,(a)原告の内湯設置は公安23 行判1940・9・10行録46巻8 号716頁及び武田1942,233-267頁。