高知論叢102号

高知論叢102号 page 79/222

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地下水法の現状と課題77公益に影響を与えたかという点である(訴訟要件に関する議論はすべて省いた。以下同じ)。すなわち,(a)湯島区に温泉専用権ないし内湯を禁止する慣行があれば,規則に優先して適用され,取....

地下水法の現状と課題77公益に影響を与えたかという点である(訴訟要件に関する議論はすべて省いた。以下同じ)。すなわち,(a)湯島区に温泉専用権ないし内湯を禁止する慣行があれば,規則に優先して適用され,取消請求は棄却される。これに対して,慣行がなければ規則が適用されることになるが,規則3 条2 項は行政庁に対して非常に包括的な授権しかしていない。そこで,規則の目的から,原告による内湯の設置が他の既設の温泉に影響を与えず,公安公益を害するおそれもなかった場合には,取消請求が認容されることになる。本件において,城崎町(Y2)は,X を被告として民事訴訟を提起し,Y2に「温泉専用権」がある(湯島区内において温泉を排他的に利用する権利を有する)ことの確認とX に対する妨害排除(X が所有する泉源の埋め戻し)を請求した24。民事訴訟において,Y2 は,次のように主張した。湯島区には内湯を禁止し外湯を堅持する慣習法がある。すなわち,(b)原告財産区は,地下泉脈全体について所有権を有する。(c)仮に,所有権がないとしても独占排他的利用権すなわち専用権を有する(内湯を禁止できる)。(d)上記のような専用権がないとしても,共同浴場泉源に優先性を認める慣行にもとづく物権的優先権があり,共同浴場の泉源が減少ないし枯渇する場合には埋め戻しを請求できる。(e)そうでないとしても,湯島区には内湯禁止の慣習法があるか,(f)1882年の和解契約に基づき,内湯をやめよと請求する権利を有する。2-2-3 裁判所の見解地方裁判所は,行政訴訟において県知事Y1による利用停止命令を取り消し,かつ,民事訴訟においてY2 の請求を棄却した(いずれの事件でもX が勝訴)。まず,行政訴訟において,(a)湯島区には法例2 条(現在の法の適用に関する通則法3 条)にいう法的効果を有する慣行はない,もしくは,消滅しているから,本件では,規則が適用される。規則3 条2 項は,その目的を実現するため,行政庁に許可処分の取消等の権限を授権するが,原告による内湯の設置は24 神戸地裁豊岡支決1938・2・7新聞4249号5 頁。