高知論叢102号

高知論叢102号 page 80/222

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78 高知論叢 第102号他の既設の温泉に影響を与えず,公安公益を害するおそれもなかったため,取消事由には該当しない。また,民事訴訟において,裁判所は次のように述べて,Y2による請求を棄却した。第1 に,地下水....

78 高知論叢 第102号他の既設の温泉に影響を与えず,公安公益を害するおそれもなかったため,取消事由には該当しない。また,民事訴訟において,裁判所は次のように述べて,Y2による請求を棄却した。第1 に,地下水利用権は,地方の慣習がない限り土地所有権に附随する(b・c・d)。第2 に,地方の慣習は,土地所有者が採取することを許容していた(e・f)。すなわち,1880年代までにいくつかの宿において内湯が建設され(註22参照),1930年代には多くの宿が内湯を持っていた。Y2は大阪控訴院に控訴し,裁判所は戦時調停を勧めたが,第2 次世界大戦の間,手続は進まなかったが,X は判決が出るまで内湯の建設をしなかった。敗戦後,1948年には手続が進み,1950年にはX の相続人とY2の間で調停が成立し,次の条件の下で内湯が認められることになった。第1 に,X は温泉が湧出する土地の所有者全員の同意を条件として,Y2が城崎町湯島地域において湧出する温泉を利用する権利を有することを確認する。第2 に,湯島区は,外湯を堅持し,新たに内湯を設ける場合について条例を制定施行する。第3 に,X の内湯は条例に則った内湯として扱われ,調停成立後10年間は内湯条例要項に定める減量規定の適用を免れるものとする。なお,内湯条例要項は,温泉の持続的利用を目的としている。内湯の新規開設の可否は,温泉委員会に諮問され,区議会が議決し,町長が最終決定を行うことになる。町長は,現存共同浴場泉源の泉量が著しく不足した場合に,温泉委員会に諮り,区議会の議決を経て,既に許可した内湯引湯の分量を減少し,又はこれを中止することができる。また,豊岡市湯島財産区は,温泉の管理・供給施設に投資し,集中管理を行うことになった。その後,内湯条例・要項は改正され,城崎温泉利用条例・城崎温泉供給条例等となっている。2-2-4 私見 「地下水への権利」の法的性格と,制定法上の根拠,判決への反論まず,裁判例上,「地下水への権利」は,地下水の所有権ではなく,地下水利用権(一定量ないし一定割合の地下水の採取を行う権利)である。地下水利用権は,帯水層上の土地所有権(ないし土地への権原)に附随する権利である。