高知論叢102号

高知論叢102号 page 83/222

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地下水法の現状と課題81は消滅する。いずれの場合も,地域共同体の慣習による秩序に戻ることはできず,制定法(条例を含む)及び協定による秩序形成が重要になる。近年,次に見るように,地下水の過剰な採取や廃棄物....

地下水法の現状と課題81は消滅する。いずれの場合も,地域共同体の慣習による秩序に戻ることはできず,制定法(条例を含む)及び協定による秩序形成が重要になる。近年,次に見るように,地下水の過剰な採取や廃棄物処分場立地による地下水の汚染や枯渇の問題が起きている。このような問題状況に対応するため,地方自治体による地下水保全条例や水道水源保護条例(以下「地下水保全条例」)が数多く制定されている。そこで,次に,地下水保全条例の適法性について検討する。3 地下水利用権の現代的規制 地下水保全条例の合憲性・適法性 3-1 地下水をめぐる現代的問題と法律による規制地下水の枯渇・汚染の原因は次のように要約できる。地下水の涵養量よりも採取量が多ければ,地下水位は低下する。また,地下水汚染は,例えば半導体の製造や石油の販売・化学肥料の使用・家畜の排せつ物等によって起きる。近年,世界各地でサンゴ礁の白化が起きており,その主な原因は海水温の上昇であるが,陸域の汚染された地下水が沿岸海域に流出し,白化に拍車をかけている可能性が指摘される(前掲註9 )。まず,過剰な採取対策としては,次のような法律が制定されてきた。温泉法(1948年)は,泉源の保護(及び温泉採取における防災)を目的とする。工業用水法(1956年)・ビル用水法(1962年)は,地下水の過剰な採取による地盤沈下の防止等を目的とする。新河川法(1964年)は,治水・利水を目的とする(1997年に改正され,目的に河川環境の整備と保全が加えられた)。しかし,これらの法律は,地下水利用権の内容を定義していないし,地盤沈下を防ぐ目的以外では地下水の過剰な採取を規制していない。次に,水道法(1957年)は,清浄で安価な水道用水の供給を目的とする。また,廃棄物処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」。1970年)は,廃棄物の排出を抑制し,適正な処理(保管・処分等)により,健全な生活環境を保全し公衆衛生を促進することを目的とする。具体的には,産業廃棄物処分場を確保すると同時に,処分場による水質汚濁を防止することも目的である(14条以下)。