高知論叢102号

高知論叢102号 page 84/222

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82 高知論叢 第102号さて,廃掃法上の施設許可の基準(15条の2 第1 項)を遵守する限り,水質に関する問題は起きないはずであるが,処分場立地に関する紛争は絶えない。地方自治体は,地域の問題に対処するために独....

82 高知論叢 第102号さて,廃掃法上の施設許可の基準(15条の2 第1 項)を遵守する限り,水質に関する問題は起きないはずであるが,処分場立地に関する紛争は絶えない。地方自治体は,地域の問題に対処するために独自条例の制定を迫られ,地方自治体は行政訴訟を引き受けざるを得なくなっている。これに対して,廃棄物処分業者は,民事差止訴訟(裁判例については註27を参照)への対応を強いられている。そこで,次に,地下水保全条例に対する理論的批判と裁判例における議論について検討する。3-2 地下水保全条例への理論的批判地下水保全条例に対しては,憲法レベルの批判(憲法22条適合性及び憲法29条適合性)と法律と条例の抵触のレベルでの批判があるが,ここでは前者について論ずる。まず,憲法22条適合性について,紀伊長島町水道水源保護条例事件の調査官解説は,本件条例が消極的・警察的規制であることから「本件条例の規制が目標達成のために最小限度の規制であるかどうか,あるいは,必要最小限度のもの」であるかどうかが問題となるとする。そして,取水量の制限は目的に照らして合理的限度内だが,施設の設置自体の禁止は合理的限度を超えると指摘する28。さらに,工業用水法・ビル用水法・温泉法が,採取施設の位置・揚水機の吐出口断面積による規制を行っていることを挙げ,条例もこのような仕組みをとることが可能であり,採取規制が行われる指定地域の範囲が厳格に限定されているとする。しかし,工業用水法等は,地下水利用権の性格について明確な結論を出しておらず,目的も地盤沈下防止に限定されており,資源の持続的利用の視点に欠けている29。このような法律を比較対象として,地下水保全条例の憲法22条適28 杉原2005,231-241頁(3765-3775頁),特に注7 を参照。29 松本2008,26-27頁。地下水利用権の性格について,工業用水法制定時には,徳永久次政府委員(通商産業省企業局長・当時)は,土地所有権の内容であるが内在的制約であるとしている(第24回国会商工委員会第22号・1956年3 月23日)。これに対して,ビル用水法制定時には,土地所有権の内容であるかどうか議論が分かれていた(第40回国