高知論叢102号

高知論叢102号 page 86/222

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84 高知論叢 第102号の効力を持つと規定する(前掲2-2-4)。さらに,条例は,地方議会が制定する法規範であり(憲法94条・地方自治法14条1 項),慣習より公示性も高い。特定の個人を不利益に扱うものではなく,住....

84 高知論叢 第102号の効力を持つと規定する(前掲2-2-4)。さらに,条例は,地方議会が制定する法規範であり(憲法94条・地方自治法14条1 項),慣習より公示性も高い。特定の個人を不利益に扱うものではなく,住民の権利を一方的に制限するものでなければ,法律同様の効果を認めてよい(註25)。法律が存在する場合には,法律との抵触がないことが必要であるが(この点は次に述べる),この条件を満たし,公序良俗に反しない条例の効力を否定することは妥当ではない32。なお,地下水利用権の内容は,慣習よりは条例・条例よりは法律によって一般的に明確化し,地域性を踏まえて条例や慣習に根拠がある場合に例外を認める方が望ましい。しかし,国が法律を制定しない場合,不文律に依存するより条例を制定するほうが明確性確保の観点から手段の選択として適切である。3-3 地下水保全条例の合憲性・適法性地下水保全条例の合憲性・適法性は,3 つの点から問題になる。第1 に,土地所有権に附随する地下水利用権の内容を明確化・変更・制限する規定を置くことは可能か。第2 に,(実効性確保のために刑事罰を科す条例の場合,)条例によって刑事罰を科すことは可能か。第3 に,同一ないし類似の目的を持つ法律がある場合,その条例は適法か。第1 の問題は既に論じたから,以下では,刑事罰を科すことの可否にごく簡単に触れ(3-3-1),法律と条例の抵触の問題について論ずる(3-3-2)。3-3-1 条例によって刑事罰を科すことの可否次に,条例への罰則の委任につき,最高裁は,次の場合に適法であるとした。条例が自治立法であることに鑑み,法律による具体的な内容を持つ個別の授権があれば足り,旧地方自治法14条5 項の例示は具体的な内容の委任を行っており個別の授権に当たる。よって,旧地方自治法14条5 項の例示の範囲内の罰則であれば,憲法31条に違反しない33。32 三本木1999,105頁。33 最大判1962・5・30刑集16巻5 号577頁。憲法94条が地方公共団体の条例制定権について