高知論叢102号

高知論叢102号 page 87/222

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地下水法の現状と課題853-3-2 同一ないし類似の目的を持つ法律がある場合の法律と条例の抵触の有無さらに,法律と条例の抵触に関しては,徳島市公安条例事件最高裁判決がある34。まず,道路交通法77条3 項は警察署....

地下水法の現状と課題853-3-2 同一ないし類似の目的を持つ法律がある場合の法律と条例の抵触の有無さらに,法律と条例の抵触に関しては,徳島市公安条例事件最高裁判決がある34。まず,道路交通法77条3 項は警察署長に道路交通の危険防止等の目的で道路使用許可に条件を付ける権限を与え,条件違反には刑罰が科される。また,徳島市は同市公安条例(本件条例)によって集団行進を行う場合に県公安委員会への届出を義務付け,集団行進の際の遵守条件を定め,遵守条件違反に対しても刑罰が科されることになっていた。本件において,被告は,(a)蛇行進を行ったことが道路交通法77条3 項の許可条件に違反し,(b)蛇行進を扇動したことが本件条例の遵守条件に違反するとして起訴された((b)の刑罰の方が重い)。事件の争点は多岐にわたるが,本稿との関連で問題となったのは,本件条例が道路交通法と抵触するかどうかである(構成要件の明確性に関する議論は割愛した)。本件条例が道路交通法に抵触する場合には,(b)の上乗せ部分は無罪となる。最高裁は,次のような理由で本件条例の適法性を認め,(a)だけではなく(b)についても被告を有罪とした。(ⅰ)すなわち,「条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく,それぞれの趣旨,目的,内容,効果を比較し両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない」(一般論)。(ⅱ)そして,ある事項について国の法令中に明文の規定がない場合でも,そのことが条例による規制をしてはならない趣旨であれば,条例による規制は国の法令に違反することになる。逆に,ある事項について国の法令と条例が併存していても,規律の目的が別であり,条例の適用によって法令の目的と効果をなんら阻害しなければ,国の法令と条例の間にはなんらの矛盾抵触もなく,条例が国の法令に違反する問題は生じえない。また,両者が同一目的であっても,法令が全国一律の規制を施す趣旨ではなく,自治体の実情に応じて別段の規制明示的に規定し,地方議会も国会同様に民主的な基盤を有することから,条例によって刑事罰を科すことは憲法31条に違反しないとの見解もある(垂水補足意見)。34 最大判1975・9・10刑集29巻8 号489頁。