高知論叢102号

高知論叢102号 page 88/222

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86 高知論叢 第102号を容認する趣旨であれば,国の法令と条例の間にはなんらの抵触もなく,条例が国の法令に違反する問題は生じえない(例示)。(ⅲ)道路交通法77条及びこれに基づく徳島県道路交通施行細則(以下....

86 高知論叢 第102号を容認する趣旨であれば,国の法令と条例の間にはなんらの抵触もなく,条例が国の法令に違反する問題は生じえない(例示)。(ⅲ)道路交通法77条及びこれに基づく徳島県道路交通施行細則(以下道路交通法77条)と本条例について検討すると,道路交通秩序維持という目的の重複はあるが,後者にはこれに留まらず,地方公共の安寧と秩序の維持というより広い目的がある。確かに,条例3 条3 号の遵守事項と同法77条3 項の許可条件については重なり合う部分がある。しかし,同法77条1 項4 号の規定は道路の特別使用許可について全国一律の規制を避けており,地方自治体が道路交通法とは別個に交通秩序維持の観点から規制を行うことを排除してない。道路交通法77条と条例の目的に重なる部分があり具体的規制が重複実施されていても,双方の内容が矛盾せず,条例による重複規制に固有の意味と効果があり,かつ,合理的根拠がある場合には,道路交通法77条による規制はこのような条例による規制を排除する趣旨ではない。本条例にはこのような趣旨が認められるから適法であり,かつ,構成要件も明確だから,被告は(a)だけではなく(b)についても有罪である(あてはめ)。この判決は,第1 次地方分権改革前の判決であり,第1 次分権改革後の法律と条例の関係について判断する際には,次の4 点の考慮が不可欠である。第1 に,第1 次地方分権改革において,軽視され続けていた憲法92条の「地方自治の本旨」の原点に立ち返り,国と地方の適切な役割分担を行うべきことが規定された(地方自治法1 条の2 第2 項)。さらに,同法2 条12項において「地方公共団体に関する法令の規定は,地方自治の本旨に基づいて,かつ,国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえて,これを解釈し,及び運用するようにしなければならない」と規定された。このように考えると,国と地方の権限配分は変化しており,憲法94条の解釈も影響を受ける。地方自治体の法令解釈権の自主性は条例制定権のレベルでは尊重されなければならない35。第2 に,しかしながら,住民や事業者の権利を制約する条例については,国と地方の権限の配分(憲法92条・94条)のみが問題なのではない。地方自治体35 北村2004,52-63頁及び北村2009,33頁。