高知論叢102号

高知論叢102号 page 89/222

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地下水法の現状と課題87は,条例を制定・解釈・運用する際,関連する法令の解釈において住民や事業者の権利や他の地方自治体の権限についても考慮しなければならない36。第3 に,法律及び条例の抵触の有無を判断する....

地下水法の現状と課題87は,条例を制定・解釈・運用する際,関連する法令の解釈において住民や事業者の権利や他の地方自治体の権限についても考慮しなければならない36。第3 に,法律及び条例の抵触の有無を判断する際には,徳島市公安条例事件最高裁判決の先例としての適用範囲に留意が必要である。すなわち,地方自治体が制定する条例には,法律とリンクする条例(法律実施条例)とリンクしない条例(関連政策条例と独自政策条例)がある。そして,徳島市公安条例事件最高裁判決は,独自政策条例(と関連政策条例)を扱ったものであり,法律実施条例には及ばない(ⅱ例示・ⅲあてはめ。判決の射程は,独自政策と関連政策からなる条例である紀伊長島町水道水源保護条例事件には及ぶ。後述)37。第4 に,法律及び条例の抵触の有無を判断する際には,運用実態まで勘案することが必要である。例えば,廃掃法によると,廃棄物処理施設の設置許可処分は,法令の基準に基づく厳格な審査の下に出される。また,違反があった場合には,操業停止命令や改善命令を出せる。このように考えると,阿南市条例判決のように,水道水源保護条例は,廃掃法と同一目的・同じ仕組みで意味のない二重規制であるとの論理もありえなくはない38。しかし,廃掃法は想定通りに機能していないこともあるし,多くの水道水源保護条例(や民事差止訴訟)は,廃掃法の水質汚濁を防止する機能が不十分だとの前提から出発している39。これらの点を踏まえて,次に,条例の適法性が認められた紀伊長島町水道水源保護条例事件について検討する。3-4 紀伊長島町水道水源保護条例事件403-4-1 事件の概要本件の原告は,産廃処分場の中間処分場の設置者であり,廃棄物処理及び清掃に関する法律(廃掃法)15条1 項に基づく申請を行った。1993年11月には,三36 岡田2009,272-273頁及び宇賀2010,36-37頁を参照。37 小早川・北村2009,39-40頁・北村2009,34頁・北村2010,132-133頁を参照。38 徳島地判2002・9・13判例自治240号64頁。北村2005,103頁(北村・福士・下井2005所収)及び大塚2010,477-478頁を参照。水道水源保護条例全般につき,内藤2004を参照。39 北村2004,103-106頁及び北村2005,102-103頁を参照。40 最判2004・12・24民集58巻9 号2536頁。