高知論叢102号

高知論叢102号 page 90/222

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88 高知論叢 第102号重県産業廃棄物の適正な処理の推進に関する条例に基づき,県に対して本件事業計画を提出した41。その後,紀伊長島町(当時)は,計画を精査し,1994年3 月25日に紀伊長島町水道水源保護条例を制....

88 高知論叢 第102号重県産業廃棄物の適正な処理の推進に関する条例に基づき,県に対して本件事業計画を提出した41。その後,紀伊長島町(当時)は,計画を精査し,1994年3 月25日に紀伊長島町水道水源保護条例を制定した(本件条例)。本件条例は,「水道法2 条1 項の規定に基づき,町の住民が安心して飲める水を確保するため,町の水道水質の汚濁を防止し,その水源を保護し,住民の生命,健康を守ることを目的とするものであ」り( 1 条),水質だけではなく水量を確保する点に特徴があった。「町長は,水源の水質を保全するため水源保護地域を指定することができるとするとともに(11条1 項),産業廃棄物処理業その他の水質を汚濁させ,又は水源の枯渇をもたらすおそれのある事業を対象事業とし( 2 条4 号及び別表),対象事業を行う工場その他の事業場のうち,水道にかかわる水質を汚濁させ,若しくは水源の枯渇をもたらし,又はそれらのおそれのある工場その他の事業場を規制対象事業場と認定することができる旨規定し」ていた( 2 条5 号,13条3 項)。さらに,「水源保護地域に指定された区域における規制対象事業場の設置を禁止し(12条),これに違反した場合には,1 年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処することとしてい」た(20条)。そして,規制対象事業の認定手続として「水源保護地域内において対象事業を行おうとする事業者は,あらかじめ町長に協議を求めるとともに,関係地域の住民に対する説明会の開催等の措置を採ることを義務付けられており,町長は,事業者から事前協議の申出があったときは,町水道水源保護審議会(以下「審議会」という)の意見を聴き,規制対象事業場と認定するかどうか判断することとされてい」た(13条)。「審議会は,町の水道に係る水源の保護に関する重要な事項について,調査,審議する機関であり( 5 条),町議会の議員,学識経験者,関係行政機関の職員等のうちから町長が委嘱し,又は任命する委41 本件が提訴された当時, 廃掃法は生活環境影響調査を義務付けていなかった。そのため,都道府県は生活環境影響調査要綱を策定することにより対応していた(廃掃法が1997年に改正された際に生活環境影響調査が義務付けられた)。生活環境影響調査において,大気・水質・土壌・振動・臭気等の環境影響が評価されるが,通常,水量については評価の対象とはなっていない(北村2000,161-186頁)。