高知論叢102号

高知論叢102号 page 92/222

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90 高知論叢 第102号① 本件条例の適法性の判断枠組みまず,条例の適法性について,最高裁は明示的な議論をしていないが,「異なる観点からの規制」として,条例の適法性を前提とした判断をしていると思われる44。....

90 高知論叢 第102号① 本件条例の適法性の判断枠組みまず,条例の適法性について,最高裁は明示的な議論をしていないが,「異なる観点からの規制」として,条例の適法性を前提とした判断をしていると思われる44。この点について,調査官解説は,廃掃法と本件条例の目的について,地下水の水質汚濁防止という目的は重なっているが,水源枯渇の防止については異なる観点からの規制であり,本件条例が法律の目的と効果を著しく妨げない限りで適法であるとする45。これに対して,本稿は次の理由から,条例自体は水質汚濁防止についても水源枯渇の防止についても適法であったが,条例の適用方法が違法であったと考える。第1 に,地下水保全条例が,地下水利用権の配分原理について規定する場合,地下水利用権を単に制限するものではない。むしろ,降水量や地質等の自然的条件から安全採取量が大まかに存在するところ,地下水利用権が競合している状況の下で,地域的公序としての配分原理を確認したものであり,合憲・適法である(前掲2-1-4・2-2-4・3-2及び後掲②を参照。本件では,憲法22条について明示的に議論されているが,29条及び地下水利用権について本格的に議論され形跡はない)。第2 に,自然資源に関わる問題において,地域はそれぞれの自然条件に鑑みて,適切なルールを構築しなければならない。その意味では,地方自治体の問題発見能力は特に重視すべきであり,国と地方の適切な役割分担の表れとして,法律と条例の抵触関係は柔軟に解釈されるべきである。しかし,科学的知見が必要な場合,地方自治体の能力が不足している場合,これを補ったり誤っている場合には補正したりする工夫が必要である(後掲②で述べる)。しかし,第3 に,首長や地方議会の多数派による個人の権利侵害に対する統制が,必要であることも言うまでもない。特に,土地利用・地下水採取・営業の自由の規制のように,被規制者が政治的・経済的に強いとは限らない分野においては,恣意的な規制が行われないよう,徳島市公安条例事件最高裁判決の44 阿部2005,123-124頁。なお,北村2005,346-347頁はこの見解に疑問を呈する。45 杉原2005,227-228頁。少なくとも水源枯渇の防止を図る規定は有効であるとする。