高知論叢102号

高知論叢102号 page 93/222

電子ブックを開く

このページは 高知論叢102号 の電子ブックに掲載されている93ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
地下水法の現状と課題91枠組みの適切な運用が必要である46。ここで,廃掃法と本件条例を比較すると,廃掃法が水質汚濁の防止を目的とするのに対して,本件条例は水質汚濁の防止だけではなく水源の枯渇防止も目的とし....

地下水法の現状と課題91枠組みの適切な運用が必要である46。ここで,廃掃法と本件条例を比較すると,廃掃法が水質汚濁の防止を目的とするのに対して,本件条例は水質汚濁の防止だけではなく水源の枯渇防止も目的とし,両者の目的は重なる部分もあるが異なっている。また,(前述の通り)重複部分についても,廃掃法の規制だけでは水質汚濁の防止という目的が達成できない地域があるからこそ,自治体が水源保護という観点から水道水源保護条例を制定したという認識も踏まえなければならない。もっとも,仮に,目的が同一であるとしても,廃掃法には自治体の実情に応じて別段の規制を容認する趣旨が認められ,本件条例に固有の意義と効果があり,合理性も認められるから,本件条例が適法であり得たと思われる。② 本件条例の採用する地下水利用権概念と認定処分の適法性次に,本件条例において,「水源の枯渇」は「取水施設の水位を著しく低下させること」とされ( 2 条3 号),本件高裁判決は,本件条例について相関権法理における「厳格な安全採取量」に類似の概念を採用したものと解釈できる。「相関権法理における厳格な安全採取量概念」とは,「その流域の地下水涵養量の上限≧個別の地下水利用権による取水量の合計」である(前掲註12)。そして,個別の利用権者の取水量は,厳格な安全採取量を面積に応じて比例配分することにより得られる47。46 この点について,本件確定後の判決であり,地方税法の法定外普通税に関する事件であるが,神奈川県特例企業税条例事件地裁判決(横浜地判2008・3・19判時2020号29頁)と高裁判決(東京高判2010・2・25判時2074号32頁)が対照的な立場をとる。すなわち,地裁判決は,地方税法の趣旨を全国一律の規制を行う趣旨であるとし,法律と条例の趣旨・目的・内容・効果を比較し,条例が法律の趣旨・目的・内容・効果を阻害しない場合には適法と解釈した。そして,企業税の課税は,地方税法の定める法人事業税の繰越欠損金控除の規定(改正前地方税法72条の14第1項,改正後地方税法72条の23第1 項)の趣旨に反し,本件条例は違法であるとし,原告の請求を認容した。これに対して,高裁判決は,徳島市公安条例事件最高裁判決が示した目的・効果を「なんら阻害することがない」という基準を,「重要な部分において否定されて」いないという基準に置き換えた。その上で,地方税法は法定外税として繰越欠損金以外の部分に課税することを禁止しておらず,企業税は応益課税・法人事業税は応能課税で別の税目だから,法律と条例の抵触はないと判示し,原告・被上訴人の請求を棄却した(2011年11月現在,上告中である)。いずれを支持するかは,別稿で議論する。47 Getches 2009, pp. 265-266, 269-270 and 289-290.