高知論叢102号

高知論叢102号 page 95/222

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地下水法の現状と課題93の年には49? / 日に削減するように答申を行っていた。これに対して,鑑定書は,渇水期・非渇水期を区別せず,本件の敷地の安全採取量を108 ? / 日とする(31頁)。鑑定書の意見通りに委員会が....

地下水法の現状と課題93の年には49? / 日に削減するように答申を行っていた。これに対して,鑑定書は,渇水期・非渇水期を区別せず,本件の敷地の安全採取量を108 ? / 日とする(31頁)。鑑定書の意見通りに委員会が答申を行い,町長が事業者と事前に協議していれば,認定処分は適法であったと思われる。③ 本判決の評価と適用範囲さらに,本件は,条例が事業計画の提出後に制定された事件であり,本判決の射程は限られている。なぜなら,紀伊長島町の事件において,条例は既に計画を策定し申請された施設に対して適用されたために,認定処分だけが違法とされたからである。例えば,宮古島市地下水保全条例は,地下水の採取規制と水道水源保護という二つの部分からなる。そして,後者の構造は紀伊長島町水道水源保護条例のそれに非常に似ているが,運用において,対象事業場の手続的な権利を尊重して認定し,採取制限の科学的根拠を明確に示せば,この条例は適法である。上記の点と関連するが,判決のいう「協議」は,条例が規定する「協議」(13条)とは異なる。すなわち,条例13条の「協議」は,認定処分の申請に近い。これに対して,判決上の「協議」は狙い撃ち的に制定された条例の効果を緩和するための「協議」の場である。そして,条例上の「協議」について,行政手続法は,申請に対する処分を行う際に事前協議を行うことは義務づけていない。さらに,最高裁は判決上の「協議」を義務付けていない条例を適用する場合については議論していない。この意味でも,本判決の射程は限定されている49。結論として,条例が事後的に制定されたことに鑑みると,判決のいう「協議」は憲法22条との関連で営業の自由の規制という条例の効果を緩和するために必要な手続であり,認定処分の取消しはやむを得ない。しかし,地下水利用権の概念及び本件条例の合憲性・適法性について,明示的に議論すべきであった。立法論的には,「安全採取量に照らし,水源を枯渇させ,又はそのおそれのないこと」(下線部を付加)を認定処分の要件とすることが求められる。49 北村2005,344-347頁,大久保2005,57頁及び大塚2010,477-478頁。