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94 高知論叢 第103号等が,一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し,協働することになるが,その舞台を作るためのルールと役割を協働して定めることが「新しい公共」を作る事に他ならない,という....

94 高知論叢 第103号等が,一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し,協働することになるが,その舞台を作るためのルールと役割を協働して定めることが「新しい公共」を作る事に他ならない,ということである。「新しい公共」が提起する公民協働型社会構想は,新自由主義的な理念に基づく福祉国家の再編成という側面がある。小原隆治氏は,公民協働型社会構想について,1990年代後半以降のいわゆる「構造改革」が進められた結果として生じている福祉と雇用条件の後退について,後退を補うセーフティーネットの役割を民間組織,とくに市民団体や地域組織に期待するものであることを指摘している12。一方で,小原氏は,少子高齢化が急速に進むにつれて福祉を中心とした,地域密着型で展開すべき公共政策に対する需要が高まっており,とりわけ誰が政策を担うのかという問題関心が高まっている,ということも指摘している。小原氏のいう地域密着型政策需要とは,例えば,高齢者に対する介護予防や介護福祉,高齢化が進展するなかでコミュニティの維持が困難になった農山村部での「限界集落」への対応,といったことなどがあげられている。小原氏が指摘しているように,「新しい公共」が提示する公民協働型社会構想は,行政の責任を後退させ,民間組織に代替させるという側面があるが,過疎地域,中山間地域の主体という観点から見れば,地域を支えていくための新しい方向性を提起するものになっている。公民協働型社会構想の持つ後者の側面については,例えば,藤山浩氏によれば,集落の小規模化・高齢化が,暮らしを支える多種多様な社会経済的つながりである「ネットワーク」を弱体化させていることが問題であるとして,持続可能な地域をつくっていくためには,「新たな結節機能」としての地域マネジメント組織・人材を活用していくことが重要であるとしている13。藤山氏のいう「結節機能」とは,地域・分野を越えて柔軟に地域内外の人々を結びつける「ハブ」的な役割を担う人材・組織・拠点が一体化した機能を指しており,「新たな結節機能」を担うのが,NPO や,地域マネージャー,集落支援員,地域おこし協力隊である,というイメージである。過疎地域を支えていくためには,地域をつなぐ組織・人材に対する必要性と法的・財政的支援が強く求められている状況にある。例えば,高知県北川村社会福祉協議会の取り組みによると,北川村の集落の状況は「限界集落」を通り