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96 高知論叢 第103号集落はどこまで高齢化していくのだろうか。「限界集落」の行き着く先は消滅集落であると大野は指摘しているが,その消滅を黙ってみているよりは,積極的に撤退を考える「撤退の農村計画」が躍り....

96 高知論叢 第103号集落はどこまで高齢化していくのだろうか。「限界集落」の行き着く先は消滅集落であると大野は指摘しているが,その消滅を黙ってみているよりは,積極的に撤退を考える「撤退の農村計画」が躍り出る今日である17。確かに活性化論で集落の未来は語ることができない。全国60,000カ所ともいわれる集落のすべてが活性化し,発展していくという筋書きには無理がある。しかし,それぞれの集落には歴史があり,日本人が生きてきた営みの姿が今なお残っている。それが,究極の過疎となってしまったからといって,集落を撤退させても良いのだろうか。集落の問題をAll or Nothing(発展か,さもなくば撤退か)の発想で考えて良いのだろうか。撤退論者たちは「体力温存のための撤退」は「積極的な撤退」であると主張するが,撤退は撤退に他ならないのではなかろうか。確かに,集落は「限界化」に直面している。しかし,どこかに「集落再生」の糸口はあるはずである。本節では,それぞれの集落の特性を把握しながら集落再生をめざしていくための,地域そのものが取り組むべき課題の一つ-ワークショップによる住民の合意形成-について考えてみたい。(2)「限界集落」なのか「小規模・高齢化集落」なのか元々,大野晃が高知県の山間地域の調査を進める中で提唱した「限界集落」は純粋な学術用語として誕生した。しかし,平成の市町村合併が推し進められる中で,地方,そして辺境の地にもマスコミが目を向け始め中山間地域の限界集落がクローズアップされることとなった。限界集落というショッキングな言葉のイメージと中山間地域の映像があまりにもマッチしたために―しかも,作り込んだイメージで―,マスコミが好んで使用し,一般用語として広く用いられるようになった。また,集落人口の高齢化率にのみ着眼して,新聞一面に大きくとりあげられることもあった。マスコミが限界集落を使用するときは,常に何らかの「問題提起」が含まれている。限界という言葉の持つネガティブイメージが,該当する地域住民には「受け入れ難い」という意見もあり18,限界集落に変わる用語を探し求める風潮も生まれた。しかし,限界集落をお達者集落や元気集落という用語に置き換えたとしても,それらは決して現実を反映しているとはいえない。