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104 高知論叢 第103号限界集落では,すでに生業としての農業を成立させることは難しくなっている。しかし,そこに「人」が住む限り,撤退論を持ち出すのではなく,地域の持続可能性を問い続けなくてはならないのではなかろうか。ワークショップを通じて,地域の課題としてあげられたのは,決して実現不可能な「夢物語」ばかりではない。地域住民たちは,自分たちの立場を十分に理解しており,多くを望んでいるわけではない。むしろ無欲ですらある。限界集落に暮らす人々の小さな願いが「絵に描いた餅」ではなく具体化するように,実施計画を作り,実行して,ふりかえる,という手法を地域社会に根付かせていく。つまり,新しい寄り合いとしてワークショップを取り入れ,集落再生に向かって,地域住民一人一人が知恵を出し合っていくことが大切であろう。Ⅳ 地域福祉システム―「個別支援」と「地域づくり」の複眼思考で進める地域福祉―地域福祉は,住民一人ひとりへの支援,地域の拠点における交流,健康・生きがいづくりや見守り,地域や市町村全体のまち・むらづくり,というパースペークティブの広がりでとらえられる関連性がある。その意味では,市町村や社会福祉協議会には,個別支援の視点と地域づくりの視点の複眼思考が求められる25。以下では,地域福祉の原点に立ち戻った場合に,高齢・過疎化が進み孤立化した地域における高齢者の個々の生活支援と,厳しい制約がありながらも,安心して暮らせる地域づくりの複眼思考の下で,住民,市町村,社会福祉協議会,等に求められる役割と可能性がどこにあるか,を考察する。1.地域福祉の二つの眼地域福祉は,住民による住民の幸せのための相互の支えあいや地域づくりに向けた活動であり,要援護者に即していえば,援護を要する個人や家族の生活問題を地域の力で解決しながら,その人らしい生活が送れるようにするための支援であると言える。ただし,広義には,地域福祉には,住民自身によるインフォーマルな主体的活動だけではなく,フォーマルな在宅福祉サービスも含まれる。