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118 高知論叢 第103号一人ひとりが家族全体の幸せを願う。そのような関係が地域のなかにも拡大し,地域が住民一人ひとりを大切にし,そのニーズから眼をそらさないと同時に,住民一人ひとりが,住んでいる地域を愛....

118 高知論叢 第103号一人ひとりが家族全体の幸せを願う。そのような関係が地域のなかにも拡大し,地域が住民一人ひとりを大切にし,そのニーズから眼をそらさないと同時に,住民一人ひとりが,住んでいる地域を愛し,大切に思い,その発展を願って行動する時,まさに「住んで良かった,住み続けたい地域」となってゆく。この人たちと一緒に住んで良かった,住み続けたいと思える,人と人とのかけがいのない関係づくりこそが,住民主体の地域福祉活動,地域づくりの根幹となる。地域福祉の観点からとらえた限界集落における地域づくりの方向性は「つなぐ」というキーワードで集約されうる。第一に,フオーマルなサービスとインフオーマルな支え合いをつなぐ,ということである。移動の問題や独居高齢者の見守りなど,フオーマルなサービスや契約サービスだけで解決し得ない生活課題に対しては,地域の中から内発的に紡ぎ出されるインフオーマルな支え合いによって補完する方向である。第二に,タテとヨコをそれぞれつなぐ,ということである。高齢者が生まれてからずっと住んで来た地域で,どのような思いをして,何が好きで,何を誇りにして,どのような生活を送ってきたのか,という人生のタテの系である生活史を尊重した支援が求められるとともに,一人ひとりが大切にしている一日の生活サイクルを守るための専門職や住民のヨコの連携が求められる。第三に,支える人と支えられる人をつなぐ,ということである。支援を求める人と支援可能な人がどの地域にもいながら,それを表明できず,人的交流が働いていない状況が多く見られるが,それを社協職員やボランティアがコーディネートすることにより,支え合いのネットワークが循環してゆく。第四に,住民どうしの役割,得意なことをつなぎあわせる,ということである。高齢者も含めた住民の得意なこと,好きなことを出し合い,それを地域資源,人「財」バンクにして可視化,可動化させている地域もあるように,地域の潜在能力を顕在化させながら,その地域の価値ある生き方の選択肢を拡張してゆく方向である29。第五に,地域と地域をつなぐ,ということである。数世帯しか住んでいない集落における共同生活機能は衰退してきているが,集落と集落による共同事業,地区と地区,地域の中の住民と外に住む住民の協力関係を強化することによって生活課題の解決や地域活性化につながる可能性がある。今回の調査