103号

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24 高知論叢 第103号共和政治を唱える者がでないとも限らない,とこれに強く反対した。45 岩倉具視はそれは理があるとして,官吏公選はこの回限りとなった。重臣ではないが,大村益次郎の発言が重きをなしたことに....

24 高知論叢 第103号共和政治を唱える者がでないとも限らない,とこれに強く反対した。45 岩倉具視はそれは理があるとして,官吏公選はこの回限りとなった。重臣ではないが,大村益次郎の発言が重きをなしたことにはそれなりの理由があった。大村益次郎は大久保利通や木戸孝允と同格かそれ以上の存在と見なされており,彼らや公卿に直言できる人物であった。大村益次郎の発言が何故容易に受け入れられ,官吏公撰が一回限りとなったのか,それには以下のことが考えられる。1.官吏公撰は官吏共和制に繋がるという主張の合理性が認識されたことに加えて,2.意向投票によって上級官吏の派閥分布がはっきりし,権力闘争が決着したと見なされたこと,3.大村益次郎は官位は低いが軍務を指揮する重要な役職である実力者として一目置かれ,また軍整備について,旧藩との関連を排除する先進的な見解を表明していたこと 4.大村益次郎の出自は長州閥ではあるが,軍政の見解,経歴と識見から派閥公平性をもっていると見なされていたこと,以上の理由によるものであろう。議定で当選しなかった者は旧公卿,旧藩主の面々であった46。参与には旧藩右今日入札撰挙被仰附候事 輔相一人 議定四人 参与六人 右明一四日入札撰挙被仰附候事 六官知事 内廷職知事 六官副知事 同一五日 軍務官副知事45 『明治天皇紀第二巻』726頁46 この時,選出された人事は以下の通りであった。史官により記録された当選者と票数は以下に記す。輔相 三條実美 議定 権大納言岩倉具視48 権中納言鍋島直正29 権大納言徳大寺実則 参与 大久保利通49 木戸準一郎42 副島二郎31 東久世通礼28 後藤象次郎23 板垣退助21 この票数によっても薩長系の高官が大きな派閥を形成していた事が解る。それは同時に薩長の,中でも大久保利通,木戸孝允によって推薦され,任用された徴士,貢士の数が,肥前,土佐より多かった事が明らかである。この時期から明確となる高官の派閥勢力分布が以後,太政官制の権力闘争に大きな影響を及ぼした。公選によって選出された人事一覧は以下の通りであった。( )は旧職である 輔相 三條実美(議定)議定 岩倉具視(議定)鍋島直正(議定)徳大寺実則(議定)参与 大久保利通一蔵(参与)木戸準一郎(参与)副島二郎(参与)後藤象次郎(参与)板垣退助(参与) 免職となった議定と(新職)中山忠能(神祇官知事)正親町三條実愛(刑法官知事)中御門経之 鷹司輔?大原重徳(上局議長)山内豊信(学校知事)松平慶永(民部官知事)・伊達宗城(外国官知事)蜂須賀茂韻 池田慶徳 浅野長勲 毛利広封 徳川慶勝免職となった参与と(新職)萬里小路博房(会計官知事)廣澤兵助(民部官副知事)大隈八太郎(会計官副知事)阿野公誠(上局副議長)大木民平 澤宣嘉 細川護久 鍋島直大 小松帯刀 神山佐多衛 岩下佐次右衛門三岡八郎 新任嘉彰親王(軍務官知事)大村益次郎(軍務官副知事)寺島陶蔵(外国官副知事)佐々木三四郎(刑法官副知事)