103号

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32 高知論叢 第103号乱大いに起こらざるを望む,と述べたがそれは現実のものとなった。井上は,5項目の官吏改革案を提言した。1.官吏に紀律無し 2.選挙に法なし一県数百人 推薦 試用 試験に分けて官吏を採用す....

32 高知論叢 第103号乱大いに起こらざるを望む,と述べたがそれは現実のものとなった。井上は,5項目の官吏改革案を提言した。1.官吏に紀律無し 2.選挙に法なし一県数百人 推薦 試用 試験に分けて官吏を採用すべし 3.官制冗濫 顔色を窺い 事務滞る 任官の半数を削減 冗官の弊害 4.民政脩らず 5.文法太繁,各省争って新法をつくっているにすぎない61,と述べた。明治9年,井上毅は「官吏改革意見案」として,大要以下のような2つの官制改革意見62を提出した。1.教部省廃止 内務省中社寺局を置く 2.工部省を内務省に統合 3.各局には局長を一人置き,局中奏人以上の人数を限ること 局長は四等以下七等以上 奏人の数は一人か二人,やむを得ない場合でなければ三人以上を置かない 4.官員の進級を厳密にまた,井上毅は 「明治九年進大久保利通参議省冗官議」において,1. 日本の官制は大宝律令に依っている。二大臣,左右大臣,大少次官,トップをおいても権力の長がいない。権力が両立している。2. 省を分けて業務を分担することが必要である。府県職員は不十分であるが官吏が増加し千人以上になり,欧米と比較して不要な官制が多い,と指摘した。この時井上毅は司法省7等出仕の下級官吏であったが,このような提言を高く評価され,後に法制局長官となり,憲法案作成の中心となる。このような井上毅の意見であるが,以下に示す,統計からみると,江戸時代の武士階級や明治10年以降における官吏と比較すると,この時期の官吏が「冗官拡大」「組織肥大化」という井上毅の主張は必ずしも正鵠を得ていない。太政官正院は太政官職制改革によって太政官の最高機関となり,なかでも正院議官の権限は強まった。輔弼の責任も明確にされたが,正院における大臣の政治責任は弱く,内閣議官が実質的に輔弼の役割を担った。明治10年に正院が,明治13年に参議省卿兼任体制は廃止される。明治14年以降の職制の変化は井上毅から伊藤博文への建議が強く反映している。明治14年10月の職制第八変において参議・省卿兼任が復活し,省卿は内閣61 井上毅「官吏改革意見案」明治7年4月 岩倉具視に提出『井上毅伝史料篇第1』昭和41年11月4日62 「官制改革意見案」明治9年『井上毅伝史料篇第1』昭和41年93頁